グローバルSCMをクラウドで開拓するクラステクノロジー田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2013年02月26日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
前のページへ 1|2       

コンテンツ・ベンダーへの変身

 2013年に入り、同社に追い風が吹いてきた。製造業のIT投資が回復しつつあることだ。特にグローバル展開する製造業が生産体制の再編に着手しており、日本で設計した商品を中国で生産するといったパターンに加えて、中国からアジアへと生産拠点を広げる。アジアと欧米で、同時に生産を立ち上げることもある。中国以外に生産拠点を移管するといった「チャイナ・プラスワン」「脱・中国」の動きも出てきた。

 こうした生産拠点の移管や製品の仕様変更に瞬時に対応するには、データを共有する基盤が必要になる。四倉社長は「リアルタイムなもの作りが求められている」と、それに応えられるECObjectsの需要拡大を期待する。しかも、必要な時に必要な資源を利用できるクラウド対応のニーズが高まっているという。

 四倉社長は「パブリッククラウドは『機密情報が漏れる』と、ユーザーは心配するが、その可能性は極めて低い。セキュリティは充実しているし、冗長度があり堅牢だ」とメリットを述べる。しかも、冗長度のある構成を容易に構築できるなど、「贅沢なシステム構成を実現できる」(同)。使わなければ、料金はかからない。こうしたクラウドの利点に気付き始めた製造業が増えており、「SaaSの利用者が5年以内にオンプレミスを抜くと思っていたが、もっと早まりそうだ」(四倉社長)と予想する。

 クラステクノロジーの事業構造も「モノを売る」から「サービスを提供する」へと変化している。別の言い方をすれば、パッケージソフト・ベンダーからSaaSコンテンツ・ベンダーへの変身を遂げようとしているのだ。「どのデータベースを使うのか、どのOSを使うのかが問題だったが、これからはコンテンツが主役になる。しかも、クラウド対応はパッケージソフトの生命線になる」とし、四倉社長はECObjectsの機能拡充を着々と進める。


一期一会

 四倉社長に初めて取材したのは2004年のこと。約100人の中小IT企業がどのような方法で、大手IT企業と協業し、大手製造業に生産管理システムを売り込む事業を展開しているのかと知りたかったからだ。ECObjectsは、四倉社長が顧客の声を聞きながら、「こうあるべきだ」と自ら考えて、開発した自信作である。請負で開発したものではない。

 だが、製造業向けの事業は景気に大きく左右される。安定した収益基盤が欲しい。そこで、開発したのがクラウド型人事/給与/勤怠システムだ。ECObjectsの統合化部品表を活用し、グループ会社を含めた人事や給与、勤怠の情報を多年度にわたり一元管理できるものである。こちらも四倉社長が開発した。ただし、2010年に設立したソフトウェア開発および販売を行うECMが扱う。生産管理とは異なり、大きなカスタマイズは発生しないし、どの企業にも売れる。1人当たりの月額利用料は約1000円と安価で、販売方法も異なる。

 とはいっても、設立間もないECMに知名度はないし、営業力もない。そこで、クラウド事業者にOEM供給するなど協業関係を築く。一方の「クラウド事業者は売れるコンテンツを求めている」(四倉社長)。SaaSというコンテンツが勝負の時代になると、販売方法は大きく変わる。人事/給与/勤怠システムは、その先兵的な役割を担うものに思える。

「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ