クラウドコンピューティングは企業経営に何をもたらすのか【後編】(2/2 ページ)

» 2013年03月06日 08時30分 公開
[金谷敏尊(ITR),ITmedia]
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ビジネススピード

 ITがビジネスの足かせになってはならない。これが現代の企業ITへの要求である。クラウドサービスの活用によって、ネット通販のみならず、さまざまな場面で迅速なビジネス展開を期待できるようになる。プロジェクト用に暫定的にサーバが必要な場合、ファイルサーバの利用率が増して早期にストレージを増強する場合、短期間でのプログラム開発や高頻度での改修が求められる場合、パートタイマーの緊急増員に伴ってデスクトップ環境を展開しなければならない場合などに、クラウドサービスは迅速かつオンデマンドでの対応を可能にする。ユーザー自らがセルフサービスで利用できるため、IT部門や管理者の負担を減らせることも時間短縮につながる。

グローバル化

 製造業を中心に国内企業の海外進出が目覚ましい。グループ企業や取引先に対するビジネスプラットフォームを提供しなければならない機会も多い。旧来のやり方では、設立した現地法人やM&Aでの買収先に対して個別にサーバ機器を調達し、アプリケーションを導入する。工期やコスト上の負担が大きく、構築や移行に数カ月を要することも珍しくなかった。しかし、クラウドを利用すれば、ネットワークと端末を整備するだけで、ただちに業務システムを利用できる。海外現地法人からアクセスした時、レスポンスが悪いといった場合は、マルチリージョンで展開するプロバイダーを選択し、より近距離のデータセンターを選択することができる。

新規事業

 企業が新規事業やプロジェクト投資を行う際に懸念されるのは、設備投資やIT資産などの固定費である。ビジネスの成長に応じてITコストを増大させる、あるいは縮小に応じて減少させることが望ましい。クラウドサービスで持たざるITを実現すれば、IT費用を変動費化(オフバランス)できるため、事業の趨勢による資産保有リスクを低減できる。これは、中小企業にとってもクラウドサービスが有利であることも意味する。

 新規事業にかかわるもう1つの価値に、クラウドにより実現できる事業の創生がある。高額投資を要求されるため実現できなかったデータ分析による事業、クラウドで生産者を結びメイカーズ革命を体現する製造事業などがその例だ。IT業界では、クラウドインテグレータやビッグデータ分析といった事業機会も出てきている。


 このようにクラウドは経営に貢献するさまざまな価値を持ち合わせている。経営幹部に向けて、IT部門やITベンダがこれらの価値を訴求しようとする際は、ビジネス用語で表現することが肝要である。ITサービス層の用語、あるいは技術層の用語の方が、馴染み深く、説明し易いのだが、一般には理解されにくいし、そもそも各人のクラウドに抱くイメージも異なる。コスト節減、グローバル対応といったビジネスキーワードを主軸に説明することが望ましい。

 最後に、クラウド活用は利点ばかりでなく、クラウド特有のリスクをはらんでいる点を付け加えておこう。セキュリティリスクに対する企業の不安感はここ数年で随分払拭されたように見受けられるが、金融業をはじめとする法規制の厳しい業界においてはまだ懸念が残る。クラウドは国内外のプロバイダーを利用できるため、海外法を含む法制準拠を視野に入れた利用指針を策定して、対応することが求められる。

著者プロフィール

金谷敏尊(かなや としたか)

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト

テレマーケティング会社にて顧客管理システム、CTI、IVR等の構築・運用に従事。営業部長、統括事業マネージャーを歴任後、1999年より現職。現在は、アウトソーシング、データセンター/BCP、システム運用管理/ITサービス管理、仮想化/クラウド管理の分野を担当し、ユーザー企業におけるIT計画立案、インフラ構想化、RFP策定/ベンダー選定、TCO分析などのコンサルティングを数多く手掛ける。主な著書に「IT内部統制実践構築法」(共著、ソフトリサーチセンター)。


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