原子を使った“世界最小”の映画、IBMが製作

原子を使った世界最小の映画作品「A Boy and His Atom」をIBMが公開した。映画は、ノーベル物理学賞を受賞した走査型トンネル顕微鏡を使って原子を動かし製作されている。

» 2013年05月02日 13時57分 公開
[ITmedia]

 米IBMが、宇宙最小の素子の一つである原子を使って製作した世界最小の映画作品「A Boy and His Atom(少年と彼の原子)」を公開した。映画は、何千もの正確に配置された原子を用いて約250フレームのこま撮り撮影で製作され、ギネス世界記録の認定を受けている。

A Boy And His Atom: The World's Smallest Movie

 映画「A Boy and His Atom」は、Atom(アトム)という名の登場人物が、1個の原子と仲良くなり、踊りを踊ったり、キャッチボールをしたり、トランポリンの上で跳ねたりするなど、楽しげな旅をするというもの。IBMが発明し、ノーベル物理学賞を受賞した「STM(scanning tunneling microscope:走査型トンネル顕微鏡)」を使って原子を動かし、製作された。STSは、重さが2トン、摂氏マイナス268度で動作させ、原子の表面を1億倍超に拡大して観察することができるツール。IBM Researchの研究所は、温度、圧力、振動を正確なレベルでコントロールする能力を持った、高い精度で原子を動かすことができる世界でも数少ない施設の一つだという。

 IBMの研究員は何十年にわたり、データ記録の限界を探求すべく、ナノスケールレベルで材料の研究を行っている。「物理的限界に突き当たっている従来の半導体設計の手法とは異なった、磁性に関する手法や十分に制御された表面上の原子の特性の探求は、IBMの研究員が全く新しいコンピューティングの道筋を見つけ出すのに役立つ」としている。

 主任研究員アンドレアス・ハインリッヒ氏は、「データの生成ならびにデータの消費が継続的に増加するのにしたがい、データ記録は原子のレベルまで小さくなるだろう。新しいコンピュータアーキテクチャや、データを記録する別の方法を考え出すのに採った方法をこの映画の製作に適用した」と、コメントしている。

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