クラウドERPの時代、起業家精神あふれる企業が次々と踏み出すSuiteWorld 2013 Report(1/3 ページ)

サンノゼ・コンベンション・センターでNetSuiteの年次カンファレンス「SuiteWorld 2013」が開幕した。待たれていた製造業向けのソリューションも披露され、伸び盛りの新興企業を中心に顧客やパートナーら5000人以上がシリコンバレーに詰めかけた。

» 2013年05月15日 13時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
ダウンタウンの中心には緑も多いサンノゼ(上)、コンベンションセンターの前にはトラムも走る

 ここ10年は訪れることのなかったカリフォルニア州サンノゼだが、米国経済が上向きということもあってか、かつては殺風景だったダウンタウンも次第に活気を帯びてきている。朝から日差しこそ強いものの、涼しい風が吹き抜け、むしろ爽やかだ。現地時間5月14日早朝、シリコンバレーのど真ん中、サンノゼ・コンベンション・センターでクラウドERPの雄、NetSuiteの年次カンファレンス「SuiteWorld 2013」が開幕した。

 今はサンフランシスコに移ったが、「Search Engine Strategies Conference」がまだサンノゼで行われていた2006年、Googleのエリック・シュミットCEOが「クラウドコンピューティング」という言葉を初めて使った。「すべては雲の中にある」と彼が表現したクラウドは、わずか7年あまりで、コンシューマーの世界を席巻、複雑怪奇な企業コンピューティングの世界も覆い隠そうとしている。

 この日、SuiteWorldのオープニングキーノートには、欧州はもちろん、アジアからも5000人を超える顧客やパートナーが早朝から詰めかけ、巨大なホールの前はごった返した。まるで新しい時代の幕開けが待ち切れないようだ。期間中のセッションも200以上と昨年に比べて倍増、製造や小売りといったインダストリーごとのトラックも用意され、クラウドERPのベストプラクティスやユーザー事例を共有する。

顧客中心ですべての情報を一元管理するNetSuite

 Oracleで腕利きの技術者だったエバン・ゴールドバーグ氏がNetSuiteを創業した1998年には、まだ「クラウド」という言葉もなかったが、彼が掲げたアイデアは企業コンピューティングの本丸、基幹業務システムの領域でも大きな花を咲かせようとしている(ゴールドバーグ氏は現在もNetSuiteのCTO兼会長を務める)。

 顧客企業が1万6000社に達したNetSuiteは、ERP/財務会計やCRMなど、フロントからバックオフィスまで、業務全体をひとつのクラウド型アプリケーションスイートでカバーする。顧客レコードにひも付けてすべての情報を一元管理し、営業、サポート、財務会計、配送、請求書など、すべての業務を継ぎ目なく進めることができるほか、ビジネスインテリジェンス機能も提供、各種のKPI(主要業績評価指標)によって業務や経営の「見える化」まで実現するのが大きな特徴だ。また、17の言語、190以上の通貨に対応しているため、海外現地法人の経営進捗もリアルタイムで見える化できるという。

大手半導体のクアルコムは「2層ERP」

QualcommのフェルドハイムCIO

 この日、顧客のトップバッターとしてステージに引き上げられたのは、カリフォルニア州サンディエゴに本社を置く大手半導体メーカーのQualcommだ。携帯電話向けのチップセットで大きな成長を遂げた同社は、本社ではOracleのERPが稼働しているが、新しい市場や新しい製品のマネジメントにはNetSuiteを導入して本社とつなぐ、いわゆる「2層ERP」を採用、コストとリスクを最小限に抑えながら、財務データの統合や事業の見える化を実現している。

 「メキシコのような新興国の拠点にOracleのERPは重すぎる。コストを掛けず、スピーディーに導入できるNetSuiteは完璧にフィットした」と話すのは、QualcommでCIOを務めるノーム・フェルドハイム氏だ。

 さらに同社では、新しい製品ラインを生み出すラボでもNetSuiteを活用しているという。「新規分野の開拓をめぐり、ほかの新興企業と戦うにはNetSuiteがいい」とフェルドハイム氏は評価する。

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