グローバルの情報活用を支えるM2M ボーダフォンが最新事情を披露

センサー機器などの情報をリアルタイムに活用する「M2M」について、ボーダフォンが自動車保険や海上輸送での新たなユースケースを紹介した。

» 2013年05月16日 21時20分 公開
[ITmedia]

 携帯電話大手の英Vodafoneで企業向けサービスを手掛けるボーダフォン・グローバル・エンタープライズは5月16日、センサー機器などの情報をネットワーク経由でリアルタイムに活用する「M2M(Machine to Machine)」の取り組みをメディア向けに説明した。自動車保険や海上輸送での新たなユースケースが登場するという。

二クラス・エカーブ氏

 会見したM2M APACリージョナル ビジネスディレクターの二クラス・エカーブ氏は、M2Mのメリットとして「企業が顧客との関係を構築したり、強化したりすることが可能になる。自社の商品を顧客がどう利用するのかを知り、顧客もより良い使い方、あるいは楽しく、充実したスタイルを実現できる」と話した。

 M2Mの利用シーンはさまざまであり、例えば、物流では輸送中の荷物が置かれた環境(温度や湿度など)をセンサーで把握し、そのデータをセンサーに内蔵された通信モジュールからワイヤレスネットワークを経由して、荷主に送信する。荷主はオフィスに居ながら荷物が適切な環境で運ばれているかをリアルタイムに把握できる。

 「メンテナンスであれば、機器の稼働状況をリモートから監視することで故障の兆候を把握し、事前に部品を交換することで安定稼働を継続できる。これによって安定した顧客サービスが可能になり、信頼にもつながっていく」(エカーブ氏)

 同社ではパートナーの通信事業者のネットワークを含めると、70カ国以上でM2Mサービスを提供しているという。日本では2010年からM2Mの専任組織が活動している。

 M2Mソリューションマネージャーの和田篤士氏は、同社のM2Mサービスの特徴として(1)1つのSIMが世界中で利用可能、(2)世界中の機器の情報を一元的に管理できるプラットフォーム、(3)グローバルでのサポート体制――を挙げる。特にM2Mプラットフォームに関しては、通信する機器の所在が海外の通信事業者のサービスエリアでもVodafoneに集約され、ユーザー企業はM2MプラットフォームへインターネットVPNあるいは専用線によって接続するだけで、各種情報を自社の業務アプリケーションに取り込めるという。

VodafoneのM2Mプラットフォーム

 M2M事業開発マネージャーの井田亮太氏は、「ハードウェア、ネットワーク、アプリケーションの全てをワンストップで提供できるのが、グローバルキャリアの強み」と説明する。特定業界向けのソリューション開発にも注力しており、新たなユースケースを紹介した。

 3月にVodafoneは、コンサルティング企業のTowers Watsonと提携。自動車保険会社向けにテレマティクスを活用したサービス開発を進める。これにより、例えば、自動車に搭載したセンサーでドライバーの運転スタイルに関する情報を収集し、保険会社に送信する。保険会社ではドライバーの運転スタイルを分析して、危険度の高い運転をするドライバーには保険料率を高く設定し、安全運転に努めるドライバーの保険料率を下げるといった対応が取れるようになる。

 従来の自動車保険は、ドライバーの年齢に応じて保険料率が設定されるケースが多い。「M2Mによって一人ひとりのドライバーに応じた料率を設定することで、商品の公平性を高められる」(井田氏)という。

 また、4月にはデンマークのGlobe Tracker Internationalとも提携。海上コンテナ輸送における状況監視をリモートからできるようする。ここでは例えば、生鮮食品を積むコンテナの内部環境や空調機器の状況などを海上区間でも追跡できるようになり、食品の安全管理体制をより強化していけるという。

 エカーブ氏は、「日本では自動車産業やコンシューマーエレクトロニクス、産業システム業界の企業を中心に、M2Mの活用を支援したい」と話した。

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