「ニーズはかつてないほど高い」――定性調査ツールのQSR、日本法人設立の狙い

定性調査ソフトを手がけるQSR Internationalのジョン・オーウェンCEOが来日し、日本法人設立の狙いやデータ活用手法のトレンドについて説明した。

» 2013年10月08日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「定性データ活用の価値はかつてないほど注目されている」――オーストラリアのQSR Internationalのジョン・オーウェンCEOはこう話す。定性調査ソフト「NVivo」を手がける同社は今年中をめどに日本法人を設立し、オーストラリア、米国、英国に次ぐ4つ目の主要マーケットとして事業を拡大させる計画だ。

 NVivoは、ソーシャルメディアをはじめとする各種オンラインサービスなどのデータを収集、整理、分析するためのソフト。文章や音声、動画など異なる形式の定性データを統合的に分析でき、研究機関などにおける仮説検証やビジネス上の知見を得るのに役立つとしている。

photo QSR Internationalのジョン・オーウェンCEO

 最大の特徴は、さまざまな外部サービスとの連携機能だ。「NVivoは、FacebookやTwitterなどさまざまなソーシャルメディアからデータを直接インポートできる唯一の定性調査ソフトだ」とオーウェンCEOは説明する。さらに、SurveyMonkeyをはじめとする他の調査ツールからデータをインポートする機能も備え、データ変換などの手間をかけずに分析できるという。このほか、複数の調査メンバーが同時にアクセスして利用できる点や、提供地域の現地時間に合わせたサポート体制などを強みとする。

 オーウェンCEOによると、NVivoのユーザーで特に多いのは教育・研究機関や公共事業者だ。例えば、巨大地震によって壊滅状態に陥ったニュージーランドのクライストチャーチ市では、再開発に先がけて行った市民アンケートの結果分析にNVivoを活用。テキストや音声、動画などさまざまな形式で寄せられた10万件以上の回答を統合的に分析することで、市の再建に向けた市民の要望を“見える化”できたという。

 2007年には日本語版をリリース。定性調査に対する日本でのニーズや関心は6年間で高まり「(日本法人設立に向けて)いいベースができた」とオーウェンCEOは振り返る。今後、11月をめどに東京オフィスを設立し「1年後までに日本での売り上げ規模を倍増させ、数年間で爆発的な成長を目指す」としている。

定性/定量データを融合する「Mixed Methods」を支援

 日本市場でメインターゲットとするのは、米国など他の地域と同じく教育・研究機関という。「学術分野ではグローバルですでに多くのユーザーを抱えており、日本でもNVivoに関心を持っている大学教授は多い」とオーウェンCEOは話す。

 学術機関などでのニーズ拡大の背景の1つは「Mixed Method」(混合研究法)と呼ばれる研究方法の普及だ。オーウェンCEOによると、数値で表せる定量データとテキストなどの定性データをかけ合わせて分析することで、データ分析の価値を向上させようとするニーズが高まっているという。「例えば、定性データ分析で得られた知見を数値によってサポートしたり、数値データに定性データによる知見をプラスするケースが増えている」

 一方、こうしたデータ活用手法の複雑化は、調査期間の長期化も招いているという。「Mixed Methodsを用いた調査プロジェクトは平均18カ月ほどかかるというデータがある。調査担当者はこの期間中にも、一度分析したデータを再検証したり、日々得られる新たなデータを追ったりと、目まぐるしい変化に対応しなければならない」。そこでNVivoは「研究期間中のデータを全て記録し、複数の調査メンバーが分析結果を精査したり、追加検証を行ったりできるようにする」という。

 「定性データ活用へのニーズはかつてないほど高まっている。QSRはそれに対してテクノロジーを提供することで、研究者による調査プロジェクトの効率化や品質向上を支援する」とオーウェンCEOは話している。

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