Windows 8.1

Microsoftが展開する「Rapid Release」との付き合い方さよならWindows XP、そしてWindows 8.1(1/3 ページ)

今回はMicrosoftがOSのアップデート戦略として採用した「Rapid Release(ラピッド リリース)」の狙いや企業での対応などについて解説していこう。

» 2014年03月27日 08時00分 公開
[山本雅史,ITmedia]

Rapid Releaseの意義とは?

 2013年6月、米国・サンフランシスコで開催された開発者セミナー「Build 2013」において、Microsoft前CEOのスティーブ・バルマー氏が、OSのリリース頻度をアップしていくと表明した。これが「Rapid Release(ラピッド リリース)」と呼ばれる方針だ。

 Rapid Releaseの定義は、OSのアップデートの頻度を上げていくというものであり、この方針に従ってWindows 8のリリースから約1年後となる2013年10月に、Windows 8.1がリリースされた。今までMicrosoftは、OSのアップデートに関してバージョン番号が大きく変わる(製品名など)メジャーアップデートを中心に行っていた。このため、新しい機能を取り込むのに、3〜4年かかることがあった。

 企業では新しいOSをすぐに採用するということは無く、1年後などにリリースされるバグフィックスの行われた「Service Pack(SP)」から採用することが多い。これは、初物OSでは既存のアプリケーションが新OSに対応していないことに加え、SPがリリースされる1年後ぐらいにはOSが安定(多くのバグが修正される)し、互換性も高くなるからだ。既存アプリケーションの動作テストが終了し、動作に問題のあるアプリケーションへの修正パッチもリリースされるため、企業では安心して採用できる。

 ただしMicrosoftは、「SP神話はあまり当てにならない」と語っている。例えば、Windows 7の1年後にリリースされたSP1は、毎月のWindows Updateで提供されているアップデート(月例パッチ)の集合体であり、SP1だからといって特別なものでは無い。毎月Windows Updateを行っていれば、セキュリティレベルや安定性を高く保つことができるとしている。

 この連載の第一回で解説したように、Windows OSは2000年以降、大きくつまずいていた。Windows XPは、最初のリリースこそ評判が悪かったものの、Windows XP SP2において大幅なアップデートを行い、OSの中身がほとんど変わってしまったほどだ。

 Windows Vistaは、互換性の問題や高性能なPCスペックを要求したため、多くの企業が採用を見送った。逆に大成功したのがWindows 7だ。タブレットへの対応でユーザーインタフェースが大きく変わり、多くの企業が採用を見送ったWindows 8などのメジャーアップデートは、ある意味ではギャンブルともいえる要素が強い。

 メジャーアップデートだけでは、次のOSがリリースされるまで時間がかかる。大きく変革するIT環境にWindows OS自体が取り残されてしまう。Microsoftのビジネス上としても、最初にリリースした際の印象がその世代のOSのイメージとなりがちで、Vistaのように最初につまずいてしまうと、SPをリリースしてセキュリティレベルや安定度が増しても(ハードウェアの進化も)、最後まで“駄目なOS”というイメージがつきまってしまう。

 これに対し、同社のライバルとなるAppleのMac OS XやiOS、GoogleのAndroidなどは、年1回のアップデートを行うことで、OSの進化を加速させている。MicrosoftはこれらのOSに負けないように、アップデートの頻度を上げるべくRapid Releaseを採用したのだろう。

Build2013でRapid Releaseに関して言及する前CEOのスティーブ・バルマー氏(Microsoftの記者説明会資料より)
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