スマホでも安心して利用できる保険を目指して――ライフネットが挑む新スタイルの実現

「対面」が常識の生命保険の世界で、近年に存在感を高めつつあるネット専業のライフネット生命保険。スマホユーザーのネット利用が増える今、この潮流をビジネスへ取り込もうとする同社の狙いを聞いた。

» 2014年04月07日 12時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

子育て世代が安心して利用できること

 2006年創業のライフネット生命保険は、生命保険商品をオンライン専業で販売する新たなモデルを展開している。顧客接点はWebサイト。PCサイトがメインだが、2013年4月にスマートフォン専用サイトも開設した。モバイルのネットユーザーが増える中、同社はこの変化にどう対応しているのか――マーケティング部の小俣剛貴さんと渡邉直俊さんに聞いた。

 同社のコンセプトは、若い世代が安心して子育てに取り組めるための低廉な生命保険の実現だ。従来の生命保険の販売は、営業職員などが行う場合が多い。慣れない人にとって生命保険は難解な部分も多く、対面で営業職員に相談や見積り、契約などができる安心感はあるものの、そのためのコストが伴う。同社ではネットによる直販とすることでコストを削減し、相談などはコールセンターで受けることにより、保険商品の低廉化を実現している。

 同社が扱う保険商品は、定期死亡保険の「かぞくへの保険」、終身医療保険の「じぶんへの保険」、就業不能保険の「働く人への保険」、定期療養保険の「自分への保険プラス」の4種類。ラインアップとしてはシンプルだが、顧客接点は基本的にWebサイト(電話対応も提供)であるため、顧客に分かりやすい商品説明などのコンテンツ、利用しやすい見積り・契約といったサービスを提供できるかが重要となる。

ライフネット生命保険のPCサイト

 「2年ほど前からスマートフォンによるサイト訪問者が増え始め、新たな顧客接点になり始めました。こうした新しい顧客を確実に取り込んでいくことが、経営上の重点課題になっています」(渡邉さん)

「スマホで保険契約」というスタイル

 2013年4月に開設したスマートフォン専用サイトは、まずPCサイトで提供しているコンテンツやサービスの集約する形でスタートした。

スマートフォン専用サイト

 スマートフォンやタブレット端末の画面はPCに比べて小さく、表示できるコンテンツのボリュームは限られる。画面をタップしながらの操作感も、PCのマウスなどとは異なる。ただ、「商品の検討→見積り→契約」という流れは、基本的にPCもモバイルでも同じ。スマートフォン専用サイトの開設から半年間は、PCサイトに追いつくことを目指したという。

 スマートフォン専用サイトで把握するデータは、訪問者数や訪問者がどのような経路で訪れたのか、サイト内での利用状況、どのページで離脱したのかといった複数項目に及ぶ。これらはPCサイトも同様だが、モバイルユーザーの特性を知ることがポイントになっている。

 2013年秋からスマートフォン専用サイトの展開を本格化させ、テレビコマーシャルでもスマートフォン訴求を組み込み、スマートフォンからも生命保険に契約できることを認知してもらえるようにした。同時に、スマートフォン専用サイトにおけるコンテンツの追加・改修、新機能の実装、テストといった取り組みを1〜2週間で行うなど、スマートフォン専用サイトの強化をハイペースで進めている。

 まだ試行錯誤の段階にあるが、「スマートフォン専用サイトを利用される顧客が非常に多く、当初予想したよりも確かな手応えを感じています」と小俣さんは話す。

PCとモバイルをつなげる

 「インターネット環境がこれまでの一家に1台のPCという状況から、一人に1台、あるいはそれ以上のモバイルデバイスが利用されるようになると考えています。スマートフォンでも保険を利用できるという新しいスタイルを広げていきたい」と小俣さん。

スマートフォン専用サイトを担当する小俣さんと渡邉さん(右)

 ライフネット生命の顧客接点は、従来のPCサイトにスマートフォン専用サイトが加わり、2つの接点が存在する形になり始めた。

 渡邉さんによれば、今後は個別の接点に分けるのではなく、PCでもモバイルでも最終的に顧客が安心して契約できる環境を実現することが目標となる。「一般的なECサイトなら、顧客はその場で商品を選択・購入しますが、保険では検討から契約まで数カ月を費やします。そのためにも、両方の接点を通じて商品をしっかりと理解していただける環境作りを目指したいと考えています」と話している。

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