“爆速×ビッグデータ”でヤフーが実現したことデータ基盤にも積極投資(2/3 ページ)

» 2014年04月16日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

データ活用に関する問い合わせが高度に

 データソリューション本部が出来てから1年半が経過した。どのような成果が出ているのか。

 まずシステム面については、上述したように、これまでサービスごとに個別運用していたシステムを統合し、大規模なHadoopクラスタを構築して、データの処理速度や精度を向上させた。しかしながら、サービス部門でのデータ利活用の機運が高まっており、常にシステムへの投資や改善を続けているのだという。「ビッグデータ活用を支えるシステム基盤は先手先手でかなりのパワーを備えたものにしているわけだが、ユーザーの利用量がケタ違いに増えているので、わずか1年程度でシステムを増強しなければならない状況だ」と、データソリューション本部 TD室 室長の日比野哲也氏は説明する。

ヤフー データソリューション本部 TD室 室長の日比野哲也氏 ヤフー データソリューション本部 TD室 室長の日比野哲也氏

 そのほかの面では、サービス部門のKPIに大きな変化が見られている。以前は、ほとんどのサービスのKPIはPVとユニークユーザー数(UU)だったが、データ活用が進んだことで、リンクのインプレッション数などサービス部門それぞれに独自のKPIを持つようになった。また、仕様変更などのためのライブテストに関して、今までは検索サービスだけが対象だったが、現在ではトップページやYahoo!ニュース、Yahoo!知恵袋も実施している。「ライブテストを繰り返すことで、ユーザーの回遊性が高まり、PVが上がり、結果として広告のインプレッションも上がった」と、衣目氏は話す。

 一方、サービス部門のデータ活用が進むことで、データソリューション本部への問い合わせ件数が増え、その内容も高度化しているという。それを示す具体的なエピソードがある。

 以前、サービス部門からデータを見たいという要望があった際、自らアクセス解析ツールを使ってもらうか、データ専門のエンジニアが集計するかという2つの解決方法があった。ただし、当時のヤフー社内のアクセス解析ツールは、機能が乏しく、見えるデータも限られていたため、エンジニアに作業が集中していた。そこで、彼らの業務負荷を下げるためにアクセス解析システムの機能強化を図ったところ、サービス部門からの要求のレベルがさらに上がり、エンジニアの忙しさは変わらなかったという。

 データソリューション本部になってからも同様で、データ活用のためのシステム基盤を再構築し、サービス部門が自らデータを分析できる仕組みを整備したのにもかかわらず、日々の問い合わせは増える一方だという。

 「高度化する問い合わせに対応するのは大変なこと。しかし、データ分析に基づく施策を打った結果、PVや売り上げが伸びたという実績が出て、サービス部門の人たちにも興味を持ってもらえるのだ。地道な改善が成果に結び付いている」(衣目氏)

「VS」ではなく「With」

 サービス部門のデータ活用を支援する上で、データソリューション本部が心掛けているのが、決してサービス部門の下請けにならないことである。「企業のビッグデータ活用において、データ提供者とユーザーがこの関係性になってしまうと絶対にうまくいかない」と小間氏は断言する。ヤフーでは、データ活用にかかわるプロジェクトに必ず双方から人員を出し合い、1つのチームとして取り組むようにしている。そうすることで、大きく3つのメリットがあるという。

 1つ目は、成果である。サービス部門はデータやシステムのノウハウを持っていない。一方で、データソリューション本部はそのサービスのビジネスに明るいわけではない。成果を最大化するには、お互いの知見を共有できるよう人員を出し合うべきだというのが考えだ。

 2つ目は、コストである。社内のデータサイエンティストは有限であり、データを処理するシステムも限りがある。サービス一つ一つに用意しようとするのは困難である。特にシステムについては、1カ所に集約したほうが投資効率は良い。

 3つ目が、人材育成だ。プロジェクトにはビジネスのノウハウやデータ活用の知見が集まるだけでなく、そこでなされた議論は新たなソリューション提案において大きな武器になるのだという。

 「必ずチームを1つにして、できればプロジェクト期間は会社の座席も隣同士にする。分業ではなく連携体制をとることが肝要だ」(小間氏)

 そうした体制を作るために、サービス部門とのコミュニケーションは常に重視しているという。対立するような「VS」ではなく、共に協力し合う「With」の関係になるべく、サービス部門のビジネス体系を理解したり、データソリューション本部のことを理解してもらう工夫をしたりすることに加えて、直接顔を見て話すコミュニケーションを絶やさないようにしている。

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