IoTやクラウドの時代にこそ“無停止”が大事――StratusのダッソーCMOMaker's Voice

無停止型ソリューションを手掛けるStratusは、従来のハードウェアに加えて新たにソフトウェベースのアプローチに本腰を入れる。同社のダッソーCMOに無停止型ソリューションの展開を聞いた。

» 2014年05月19日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 無停止型ソリューションの老舗ベンダー、Stratus Technologiesは2013年に「Software Defined Availability(SDA、ソフトウェア定義の可用性)」という構想を発表。同構想に基づく初の無停止型ソフトウェアソリューション「Stratus everRun Enterprise」を2014年3月にリリースした。ソフトウェア定義によるアプローチを展開する狙いについて最高マーケティング責任者(CMO)のナイジェル・ダッソー氏と、アジア太平洋地区担当社長の飯田晴祥氏(日本ストラタステクノロジー社長)に聞いた。

 Stratusは30年以上も無停止型コンピュータを手掛けてきたことから、ハードウェアソリューションのベンダーとの印象が強い。実際にはソフトウェア製品のStratus Avanceを5年前から提供しているおり、ハードウェアベースのユーザー数とソフトウェアベースのユーザー数は、ほぼ同数だという。ダッソー氏は、「2012年に買収したMarathonの技術とStratus Avanceを統合し、無停止ソリューションをだれもが使えるようにしたい」と話す。

Stratusのナイジェル・ダッソー氏と飯田晴祥氏(左)

 同社がソフトウェアベースのソリューションを採用する背景には、企業システムの仮想化/クラウド化と「モノのインターネット(IoT)」時代の到来という流れがある。

 ダッソー氏によれば、まずサーバ視点で2つの潮流があるという。1つはサーバの仮想化と集約に伴って物理サーバを大量に消費するというデータセンターでの流れだ。もう1つは、ビッグデータ活用におけるエッジコンピューティングの台頭で、大量のデータをデータの発生源に近い場所で処理し、センター側へ効率的に取り込むというもの。エッジ側にもセンター並みの高いレベルの可用性が要求されるようになる。

 「センター側では安い物理サーバを3年未満で使い切り、壊れたら新しいサーバに交換すればいいという感覚がある。一方でエッジ側ではセンター側ほど簡単には(費用対効果などの面から)サーバを変えづらい」(同氏)

 サーバなどのハードウェアを取り巻くこうした状況に加え、システムの基盤領域ではソフトウェア定義型のソリューションが徐々に広がりつつある。さまざまな分野に無停止型ソリューションを展開するには、ソフトウェアベースのアプローチが必須というわけだ。

 飯田氏は、「国内では金融や製造、医療機関、通信サービスなどの企業からソフトウェアベースのソリューションの引き合いをいただくようになった」と話す。例えば、製造企業では多種多様な大量のデータを本社と工場で処理して生産効率を向上させたいというニーズが強まり、医療機関では診療データや電子カルテなど極めて機密性の高いさまざまなデータをシステム間で確実に活用できる仕組みが求められているという。

 同社がリリースしたeverRun Enterpriseは、Avanceの持つ障害予兆検知や自動ライブマイグレーションなどの特徴と、堅牢性に強みがあるMarathonのeverRunを統合することで、WindowsやLinuxによる仮想化環境や物理的に離れたサイト間で運用されるシステムの無停止を実現している。

 さらにStratusは、2014年下期にeverRun Enterpriseをベースにプライベートクラウド対応ソリューションも投入する計画だ。ダッソー氏によれば、同社はOpenStackのコミュニティーにも参加し、OpenStackを用いるプライベートクラウド環境に対して高可用性を提供していくと説明する。

 「OpenStackでプライベートクラウドを構築する企業は、エンタープライズアプリケーションレベルの高可用性を確保したい、クラウドへのアプリケーション移行では改修などの手間をかけたくないと考えている。われわれもOpenStackの世界に入り、そのニーズに応える」(同氏)

 なお、企業のクラウド利用はハイブリッド型が主流になるとの見方がIT業界では強い。オンプレミスやプライベートクラウドと組み合わせるパブリックサービスについてダッソー氏は、「ユーザーは『データがどこにあるのか』『自分たちのデータをほかにだれが見ているのか』という疑問を持っている。この2つの問いに明確な答えが出なければ、基幹システムやそのデータを展開する企業はほとんどないだろう」と話す。

 とはいえ、そうした懸念が解消されれば業界の見方が現実のものになるだろう。「もちろん、将来は複数のクラウドを利用するようになり、システムを無停止で運用することがより重要になってくる。われわれのソリューションもそれに応じて発展する」(ダッソー氏)

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