モバイル・クラウド時代における情報交換手段の一長一短コンシューマITの企業活用(1/2 ページ)

本連載ではクラウド・モバイル時代における従業員の安全な情報共有・交換手段の在り方について考察してきた。最終回は、従業員の情報交換手段として現在挙げられる具体的なソリューションを一覧にし、利用シーン別にそれぞれの特徴を比較・解説する。

» 2014年06月24日 08時00分 公開
[森本純(トレンドマイクロ),ITmedia]

情報交換手段の新たな潮流

 最終回となる今回は、従業員の情報交換手段として現在挙げられるソリューションを一覧化し、それぞれの特徴を比較検討してみたい。なお、各ソリューションが持つ実際の機能については製品・サービス毎に違いがあるため、一般的な特徴を網羅することに主眼を置く。今後における情報交換手段の導入と付随するセキュリティ対策を検討するための参考になれば幸いである。

 従業員の情報交換手段として最も一般的なのが、メールの添付ファイルとUSBメモリである。手軽に利用でき、多くの企業で主要な情報交換手段になっているであろう。ただし、前者については添付するデータファイルの大容量化に伴うメールトラフィックの圧迫や、添付ファイルを悪用した不正プログラム感染のリスクがあり、後者については持ち運び時の紛失・盗難のリスクや、USBメモリを経由した不正プログラム感染のリスクが挙げられる。そのため、利用を制限したり、禁止したりする企業も見られる。

 そして、モバイルの普及により新たな情報交換手段として台頭してきたのが、パブリッククラウドで提供されるオンラインストレージサービスだ。これは、個人利用を前提として一定容量まで無償で利用できるコンシューマ向けのものと、企業での利用を前提として管理機能や共有ファイルの自動暗号化機能などが備わった有償の法人向けのものに大別される。前者はコンシューマ向けと書いたが、利用の簡便さから、勤務先の業務データを気軽にやり取りしている人は少なからず存在するのではないだろうか。

 また、企業における情報交換手段の定番が、Active Directory(AD)と連携してファイルアクセス管理を行う、いわゆるWindowsのファイルサーバだといえる。しかし、Windowsのファイルサーバは一般的に社内ネットワーク内に設置され、情報交換の対象は社内のWindows端末、ADのユーザーに限られる。

 最近では社内に設置することを前提としながら、上述のパブリッククラウドのオンラインストレージサービスの要素を加味した新たなソリューションが登場している。これは、システム自体は社内に構築しつつ、インターネットからモバイル端末を利用してアクセスでき、社外のユーザーとも情報交換が可能な、いわば「企業向けのプライベートクラウドストレージ」とも呼ぶべきものだ。

 どのようなことを実現できるか、一例としてトレンドマイクロの「Trend Micro SafeSync for Enterprise」を挙げる(図1参照)。

図1 図1:Trend Micro SafeSync for Enterprise利用イメージ

 また、自分のデータを複数の端末間で共有するという前提に限れば、いわゆるVDI(仮想デスクトップ)も、次世代の情報交換手段の1つともいえるであろう。スマートフォンやタブレットなどの端末を問わず、社内・自宅・外出先などの環境も問わない。

 それでは一般的に挙げられる情報交換手段とその特徴を図2に示す。管理者のセキュリティ上の視点と従業員の利用上の視点で整理したものである。

図2 図2:一般的な情報交換手段とその特徴(クリックで拡大)
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