約70万人のユーザーのニュースフィードをインフォームドコンセントなしに操作して行った実験について、論文著者であるFacebookのサイエンティストが説明・謝罪した。今後は研究審査基準を改善するとしている。
米Facebookで約70万人のユーザーのニュースフィードを操作して実施した実験論文が物議を醸したことを受け、この論文の著者で同社のデータサイエンティスト、アダム・クレイマー氏が6月29日(現地時間)、自身のFacebookで“公式な説明”を行った。
クレイマー氏はまず、この実験を行ったのはFacebookがユーザーに与える感情的な影響について気に掛けているからだと強調した。「ポジティブなコンテンツ(いわゆるリア充なコンテンツを含む)を見ると人はネガティブに感じたり、仲間はずれにされた気がするという懸念について調査する必要があると考えた」という。
また、この実験は2012年初頭に行われたもので、ニュースフィードの操作の対象となったのは全ユーザーのわずか0.04%(2500人に1人)であり、実験実施期間はわずか1週間、投稿は完全に非表示になったわけではなく、友達のタイムラインには表示されていたと釈明した。
「Facebookにおけるわれわれの研究の目的はよりよいサービスをユーザーに提供する方法をさぐることだ。(中略)この実験についてなぜ懸念を表明する人がいるかを私は理解しており、この論文の表現が引き起こした懸念について著者一同非常に申し訳なく思っている」とクレイマー氏は謝罪した。
ユーザーや多数のメディアがこの実験について問題にしているのは、被験者の人数や実験期間ではなく、インフォームドコンセントの手順をとらず、ユーザーに無断でFacebookがユーザーを“モルモットにした”ことなのだが、この点については謝罪していない。
「私だけでなくFacebookの研究者の多くは社内の研究(倫理)審査基準の改善に努めている。問題になっている実験は2012年に実施したもので、われわれは当時よりかなり成長した。今回の論文への反応で学んだことも審査基準に反映させていく」としている。つまり、この実験以外にもFacebookでは同様にインフォームドコンセントなしに実験を行っていた可能性があるが、今後はそうした実験は行われなくなると解釈できる。
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