日立がクラウド新戦略 複数のクラウドをつなげる「フェデレーテッドクラウド」を展開

日立製作所が新ブランド「Hitachi Cloud」を発表。プライベートやパブリッククラウドなどをシームレスに利用していくための環境を包括的に提供する。

» 2014年08月26日 17時54分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日立製作所は8月26日、クラウド事業に関する新たな取り組みを発表した。日立グループ各社のソリューションを体系化し、新ブランド「Hitachi Cloud」を創設。オンプレミスやプライベートクラウド、パブリッククラウドサービスをユーザー企業がシームレスに利用していくため「フェデレーテッドクラウド」などを10月から順次提供する。

「Hitachi Cloud」におけるクラウド基盤の体系

 新施策の柱は「フェデレーテッドクラウド」「サービスインテグレーション」「SaaSビジネス基盤」「クラウドセキュリティ」の4つ。フェデレーテッドクラウドでは異なる複数のクラウド環境の連携あるいは環境間の移行をスムーズに実現すると同時に、監視や運用のためのサービスを日立がワンストップで提供する。

 サービスインテグレーションは、各種環境でシステムを迅速に展開するために必要なノウハウをデザインパターンとして活用。当初は10種類程度のパターンを提供するという。SaaSビジネス基盤ではSaaSビジネスに必要なユーザー管理や課金管理などの仕組みを日立が提供することで、同社パートナーのSaaSビジネスを支援していく。クラウドセキュリティでは認証連携やデータ保護、セキュリティ監視などの横断的なサービスを提供する。

 第一弾サービスとして、まず10月に首都圏の3つの同社データセンター間を高速回線で相互接続して提供する「高速バックアップ用ネットワークサービス」を始める。12月には同社データセンターとAmazon Web Services(AWS)の東京リージョンを50M〜1Gbpsの専用線で接続する「クラウド間接続サービス for Amazon Web Services」、認証連携の「セキュリティゲートウェイサービス」、異なる複数のクラウド環境を統合管理する「フェデレーテッドポータル」機能を組み込んだマネージドクラウド基盤サービス「出前クラウド Federated Ed.」を提供。クラウド間接続サービスではMicrosoft Azureの国内データセンターとの接続も予定している。

「フェデレーテッドクラウド」の中心的な役割の1つとなるフェデレーテッドポータル

 フェデレーテッドポータルは2015年4月から出前クラウドやAWS、Azureなど複数のクラウドサービスに本格対応する予定という。クラウド間接続では関西の同社データセンターも高速回線で相互接続させ、全国どこからでも超低遅延の高品質なネットワークサービスを利用できるようにする。SaaSビジネス基盤ではウイングアークやSansan、サイボウズ、アセンテック、マイクロソフトなどがメールやコラボレーション、ソーシャル、デスクトップ仮想化といった各種サービスを展開していく。

 新施策に向けて日立は、2013年12月に約300人体制の「クラウド戦略プロジェクト」を立ち上げ、AWSやシトリックス、エクイニクス、セールスフォース、ベライゾン、ヴイエムウェアとのアライアンスを通じて、高信頼で安全性の高い「フェデレーテッドクラウド」のための基盤を開発したという。

情報・通信システム社システム&サービス部門CEOの塩塚啓一氏

 会見で執行役常務 情報・通信システム社システム&サービス部門CEOの塩塚啓一氏は、「従来は高信頼かつ効率的なIT投資を実現し、多様なニーズへの対応するクラウドの提供に注力してきたが、昨今では新規ビジネスなどにおける新たなクラウドの利用形態が広がっている」と説明。同社は2017年までプライベートクラウド市場が年率3%、パブリッククラウド市場が同25%で拡大すると予想しており、「フェデレーテッドクラウド」によってパブリッククラウドを含む多様なクラウド利用ニーズへの対応を図る。

 塩塚氏は、「日立はベンダーであると同時にグループで32万人の従業員を抱えるメーカーでもあり、社内ユーザーに向けた社内ITの運用ノウハウを持っている。このノウハウのサービス化とパートナーとの協業強化を通じて、社会と顧客のイノベーションの実現を支え、クラウド市場のメインプレーヤーになる」と語った。

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