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» 2014年09月05日 08時00分 公開

要求定義のあいまいさが人材不足を引き起こす2015年問題の本質を探る(2/2 ページ)

[井上実,M&Iコンサルティング]
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要求定義のあいまいさを排除するためには

 要求定義のあいまいさをなくすためには、要求の構造を理解したうえで、要求をモレダブリなく整理し、論理的な文章にまとめる必要がある。

(1)要求の構造を理解する

 要求分析のための知識体系に「BABOK(Business Analysis Body Of Knowledge)」がある。カナダに本部があるIIBA(International Institute of Business Analysis)が策定したビジネスアナルシスのための知識体系である。この中で、要求は4種類に分類されている。

  • ビジネス要求:組織の目的、目標またはニーズを概要レベルで定義した要求
  • ステークホルダー要求:ステークホルダーのニーズを定義し、または、ステークホルダーがソリューションとどのように関わるかを定義したもの。
  • ソリューション要求:ビジネス要求とステークホルダー要求を満たすために必要なソリューションの特性を表す。ソリューション要求は、機能要求と非機能要求に分かれる。
  • 移行要求:現在の状態から、将来の状態に移行するために、ソリューションが必要とする能力を定義したもの

 また、ビジネス要求、ステークホルダー要求、ソリューション要求は図表4のような因果関係を持つ。要求が発生した場合には、要求がどの要求なのかを分析した上で、因果関係の前にある要求を明らかにする必要がある。例えば、ソリューション要求の場合には、ビジネス要求、ステークホルダー要求が明らかになっていないと、何のため誰のために必要となされているのかが明らかにならず、あいまいな要求になってしまう。

図表4 (図表4)要求の因果関係

(2)論理的な文章力を身に付ける

 論理的な文章とは、筋道が通っていて、全体の内容が整理されており、読み手にとって分かりやすい文章のことである。決して、理屈っぽい文章のことを言っているのではない。論理的な文章を書くことのメリットは、書き手の伝えたい内容が正確に読み手に伝わり、誤解が少なくなることにある。

 論理的な文章には、最適な構造がある。米国のコンサルティング会社マッキンゼーの編集者であったバーバラ・ミント氏は、著書「考える技術・書く技術」の中で、ピラミッド構造を提唱している。これに基づき、マッキンゼー日本支社の編集者であった照屋華子氏、岡田恵子氏が「ロジカル・シンキング」(両氏の共著)、「ロジカル・ライティング」(照屋氏の単著)という本を書きベストセラーになったため、この本はロジカル・ライティングの元祖と言われている。

 ピラミッド構造とは、人間の脳がニューロン・シナップスによるネットワーク構造(ピラミッド構造)を採っていることから、これに類似した構造で文章を書けば、読み手にとって分かりやすい論理的な文章を書くことができると考え、作り出した文書構造である。

 ピラミッド構造では、文章は大きく導入部と本文に分かれる。導入部は「Situation(状況)」「Complication(複雑化)」「Question(疑問)」「Answer(答え)」の4つに分かれており、この順番で書く。本文は主ポイントを頂点としたピラミッド構造であり、階層ごとに縦の関係と横の関係を持つ(図表5参照)。縦の関係は質問と答えの関係にあり、横の関係には演繹的な関係と帰納的な関係がある。これらを設計した上で文章を作成すれば、論理的な文章を書くことができる。

図表5 (図表5)ピラミッド構造

 ユーザー企業が要求定義書を作成する際に、要求の構造を活用して整理し、論理的な文章構造に則って文章を作成すれば、あいまいさを排除することができる。これにより、IT企業の常駐型中心の受託開発を持帰り型に変えていくことが可能となり、海外や地方のIT人材活用が促進されIT人材不足を解消することができるのだ。

【参考文献】

  • 『2013年版情報サービス産業基本統計調査』、情報サービス産業協会、2014年1月、P6、14
  • 『IT人材白書2013グローバル/オフショア動向調査【データ編】』、IPA IT人材育成本部編、2014年3月28日、P9
  • 『ビジネスアナルシス知識体系ガイド(BABOKガイド)Version2.0』、IIBA著、2009年8月1日
  • 『考える技術・書く技術』、バーバラ・ミント著、1999年3月4日
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