世界でますますつながるクラウド、NTT Comが次の構想も披露NTT Communications Forum 2014 Report

NTTコミュニケーションズが年次イベントを開催。基調講演に登壇した有馬彰社長は、クラウドサービス事業の順調な成長を紹介しつつ、新たな基盤構想も明らかにした。

» 2014年10月09日 14時01分 公開
[ITmedia]

 NTTコミュニケーションズは10月9日と10日、年次イベントとなる「NTT Communications Forum 2014」を開催している。9日の基調講演で有馬彰代表取締役社長は、クラウドサービス事業の世界展開の状況などを紹介。また、2015年度下期をめどとする次世代サービス基盤の構想を発表した。

講演する有馬社長

 ここ数年でクラウドの導入や検討を進める企業は、急速に増えている。IDC Japanの調査によれば、クラウドを導入や検討する企業は、2012年は約4割だったが、2014年は約6割に上昇。クラウドに対する期待は、コスト削減や効率化が高いものの、市場環境の変化へのスピーディな対応や意思決定の迅速化、新規顧客の獲得など、ビジネスの成長に向けた戦略的活用を期待する意識が高まっている。

 これに拍車をかけているのが、日本企業のグローバル展開の加速ぶりだ。日本貿易産業振興会の調査では大企業の約86%、中小企業の約43%が海外に拠点を保有し、ITの側面ではガバナンスを地域あるいは世界全体として共通化、標準化していくかが課題になっている。

 同社はこうした企業のビジネス環境を踏まえ、2011年10月に「Global Cloud Vision」を発表した。有馬氏は、低コストで柔軟、世界水準、安心・安全のICT環境を提供することで、企業顧客の経営改革に貢献することがコンセプトであり、その実現のために2009年以降、ICT基盤分野で実績のある十数社の企業を買収するなど、クラウドサービスの拡大と深化に取り組んできたと説明した。

 2012年から提供する「Bizホスティング Enterprise Cloud」および「Bizホスティング Cloudn」(クラウドエヌ)サービスの顧客企業数は、2012年度の2400社(うち海外700社)から2014年度には7500社(同1500社)になる見込みだとしている。世界130拠点で展開するデータセンターは、サーバルームの面積が25.1万平方メートルにまで拡大し、2016年第1四半期までに大阪、米国、英国、中国の上海や香港、インド、タイでの新増設を予定する。VPNのネットワークサービス契約数も2012年度の26万回線から2014年度には33万4000回線に拡大させる計画だ。

 有馬氏は、同社のサービスがネットワークとクラウドを一体化させている点に強みがあると述べ、今後の取り組みでは保守・運用面を含めたサービス品質のさらなる向上、仮想化技術を活用したより柔軟で低コストのサービスの実現、そして、API機能の拡充によるサービスのシームレス化を挙げている。

 直近で新たに予定する施策として、ネットワークサービスでは10月に、クラウドとVPN間の接続回線料やデータ転送料を無償化するほか、12月にはNVF(ネットワーク機能仮想)サービスを導入、顧客企業内でのファイアウォールやアプリケーション高速化などの機器の設置を不要にする。2015年3月に、世界的な問題となっているDDoS(分散型サービス妨害)攻撃の対策サービスも始めることにしている。

 また、クラウドやアプリケーション関連のサービスでは12月に、統合APIゲートウェイやID連携によるシングルサインオン、2015年3月にMicrosoft Lyncを活用したユニファイドコミュニケーションを予定。グローバル展開する企業の海外を含めたIT基盤のクラウド移行を米欧アジア/太平洋の3極体制で支援する体制の整備、パートナーシップの拡大も推進していく。

 次世代サービス基盤ではSDN技術などを活用し、異なるサーバタイプを1つのサービスと提供できるようにしていく。これによってユーザーは、共有型や占有型、ベアメタルの各タイプを必要に応じて柔軟に追加、変更できるようになる。また、マルチハイパーバイザ化(現在はVMwareのみ)や他社クラウドを含むサービスの統合管理も可能にしていくという。

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