2015年新春インタビュー

2015年、中小企業に“攻めのIT”を――大塚商会・大塚社長2015年 新春インタビュー特集

Windows XP問題が一段落したと思ったら、今度はWindows Server 2003のサポート終了――。中堅中小企業にとってはIT投資がかさむ厳しい状況といえるが、大塚商会の大塚裕司社長は“攻めのIT”に転じるチャンスだと話す。

» 2015年01月29日 09時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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――: 2014年は大塚商会にとって、どのような年でしたか?

大塚氏: 前半と後半で状況が変わりましたね。3月、4月あたりは、消費税率の変更に伴うシステム改修や、Windows XPのサポート終了を目前に控えた駆け込み需要などがあり、業績も好調でした。特にWindows XP対策については、2013年の11月から倉庫を増床したり、在庫を積み増ししたりといった準備をしていたので、「モノが足りない」「間に合わない」といった事態は回避できました。

――: 2015年7月には、Windows Server 2003のサポート終了が控えています

大塚裕司氏: (大塚商会がターゲットとしている中堅中小企業は)まだ静観している印象を受けますね。サーバはクライアントに比べてサポートが止まった場合のリスクが高いので、対応が遅れると大変なことになります。

 しかもWindows Server 2003の入れ替えは、Windows XPに比べて難しい面があります。マシンのサイズを見ただけではサーバかどうか見分けがつかないですし、一部門の予算で導入したサーバは総務や情報システム部門が把握していないケースもあるので、“社内にいくつあるか分からない”ということもあるのです。

 さらにWindows Server 2003向けInternet Explorer 6(IE 6)のサポートも終了するので、IE 6に依存する形で書かれているアプリケーションやWebページを書き換え、動作検証する必要もあります。対応のタイムリミットは迫っており、そろそろ本腰を入れないと厳しい状況になってきています。

 ただ、XPにしろWindows Server 2003にしろ、新しい環境に移行するというのは、“攻めのIT戦略”にシフトする大きなチャンスでもあるのです。

“攻めのIT”に対する投資は海外の半分

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――: Windows Server 2003の入れ替えを機に、“攻めのIT”にシフトする、という考え方ですね。

大塚氏: 例えばXPの入れ替えにしても、“OSやPCを変えてIT投資は終わり”じゃないんです。その先にはソリューションがありますし、タブレットとうまく共存させるために基幹系や情報系はどうするか、という話もできますよね。お客さんから求められているのは、“リプレースを起点に統合的な提案をしていく”ことであり、そうするのが私たちのありたい姿なのです。

 経済産業省の人から聞いた話ですが、日本のIT投資は海外のIT投資と比較して、“攻めのIT”に対する投資の比率が半分くらいだというんですね。日本のIT投資は、“手作業で書いていた伝票をデジタルに置き換える”といったような、機械的なIT化が多いのでしょう。

――: 大塚氏が考える“攻めのIT”とは、どのようなイメージですか?

大塚氏: 私は1981年に大塚商会を離れ、1992年に戻って取締役に就任したのですが、ちょうどバブル崩壊後で業績が厳しかったんですね。その状況を打破するために、約8年かけて社内システムを抜本的に切り替えたんです。

 大塚商会には300近い拠点があり、改革前にはそれぞれが個別に仕入れをし、在庫を持ち、売り上げを計上する、いわば“小さな大塚商会”がたくさんあるような構造になっていました。これを企業会計の原則通りに統一することで、“1つの大塚商会”にしたようなイメージですね。

 小手先の電子化をするのではなく、売り上げ計上の基準を見直して、300カ所くらいあった倉庫を撤廃して集中型倉庫に変え、在庫の最適化を図って効率を上げる――ということをやりました。この改革で効率化が進んだのはもちろん、事務関係のスタッフを200人弱も減らし、コストも削減できました。これがたぶん、“攻めのIT”なんですよ。

お客さんが待っているのは“効率化に効くソリューションの組み合わせ”

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――: XP特需などもあって好調な2014年だったと思いますが、苦労したことはありますか?

 2014年の前半は需要が大きく伸びたのですが、夏場から1口座あたりの売上金額が落ちているのが気になっています。企業が少し“締めて”きているような空気がありますね。これを(うちの営業成績をもとに)分析してみると、これまでとは異なる傾向の落ち込み方だということが分かりました。

 うちの営業はおおむね、成績のよい3割、中くらいの4割、苦戦している3割という比率になっているのですが、例えばリーマンショックのような(私たちの努力では)どうにもならない時には、全部が同じように落ち込むんです。でも今回は、それとは落ち込み方が違っていて、上と下の差が開いていたんですね。

 成績のよい3割は、いろいろな商材を組み合わせてセットで提案しているんです。“業務改善でコストを削減しつつ、タブレットをうまく活用して外から社内のデータにアクセスできるようにすると、取引先から注文があったときに外から在庫を確認してすぐ発注をかけられます。効率化した時間でもう一件、営業に回れます”――といった、効率化につながる提案ができるんですね。ここでは、これまで大塚商会が獲得できていなかった大企業やチェーン店の大型案件がとれているんです。

 一方で、苦戦している3割は、コピー機だけとかタブレットだけといったように単体の提案しかできておらず、まるで20世紀にもどったような売り方をしている。単品商法だとコストセールスに走ってしまい、その結果粗利が落ちるという悪循環に陥ってしまいます。ここと上とのギャップが大きかったわけです。

 うちは、オフィス用品全般を取り扱うショッピングサイト「たのめーる」を運営していて、ここをきっかけにしてさまざまなソリューションの提案をしているんですね。大塚商会のお客さんのうち、たのめーるだけしか取引がないお客さんが65%を占めているので、まだまだ提案の余地はあるはずなんです。

 ただ、いずれにせよこのままではまずいので、役員たちに「マンネリ化しているところがないかどうかよく見て、違いをつくっていこう。もっと現場に顔を出していろいろな声を聞こう」と発破をかけています。

――: 統合的な提案は今、中小企業が一番必要としているものだと思います。しかし一方で、そのためのコストが捻出できない、予算の都合でまとまったIT投資ができないと悩む企業も多いのではないでしょうか。

大塚氏: 最近では助成金や優遇税制措置が増えていますよね。こうした制度をうまく使ってIT投資をすれば、生産性を高められるはずです。2015年はWindows Server 2003のサポート終了もあればマイナンバー対応もある。回線の自由化もあります。制度面も合わせて、お客さん目線で“攻めのIT”につながる提案をしていきたいですね。



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