特集「Office 365」〜基礎知識&導入検討指南〜

Dr.コトー「甑島」をつなぐIT、薩摩川内市×Skype for Businessが示した可能性「自治体×IT活用」どうする?(2/3 ページ)

» 2015年04月28日 08時00分 公開

本島と甑島 Surface×Skype for Businessで記念式典を同時中継

 2015年3月28日、甑島国定公園の誕生を記念した式典が薩摩川内市内で開催された。本土側の薩摩川内市国際交流センターをメイン会場に、サブ会場として上甑島の上甑老人福祉センターと下甑島の長浜地区コミュニティセンターの2カ所にモニターを設置し、式典の様子を中継。合わせてメイン会場と上甑島の長目の浜展望所、下甑島の夜萩円山公園の3拠点を結び、くす玉割りと除幕式を同時に行った。

photo 甑島国定公園指定記念式典/国際交流センターのくす玉わり様子。上甑島の長目の浜展望所と下甑島の夜萩円山公園とも結ばれ、同時に除幕式を行った
photo 上甑島の長目の浜展望所での除幕式の様子

 この拠点間中継に用いたのが「Skype for Business」とSurface Pro 3によるテレビ会議システムだ。

 除幕式とくす玉割りの3拠点間中継のため、まず長目の浜展望所(上甑島)と夜萩円山公園(下甑島)を、それぞれメイン会場の国際交流センターとSkype for Businessで結び、メイン会場に設置した2つのプロジェクター画面に離島2拠点のサブ会場の様子が表示されるようにした。

photo 甑島国定公園指定記念式典の中継システム

 今回の最大の課題は、拠点間のインターネット回線だった。甑島は本土と光ケーブルで結ばれており、携帯電話網も普段の生活においては問題にならない範囲で整備されている。ただ、長目の浜展望所と夜萩円山公園は島の中でも大自然の絶景スポットにあり、市街地ほど恵まれた電波環境ではない。今回の中継にあたってはNTTドコモとマイクロソフトが技術協力を行っており、携帯電話網は電波中継やブースターなどを組み合わせて一定の通信帯域を確保しつつ、NTTドコモの一般通信網を使ったWi-Fiルータ+Surface Pro 3という中継システムを構築した。つまり、一般ユーザーの使い方とほぼ同じであることに着目してほしい。

 ただし、そう簡単にはいかなかった。現地で対応した日本マイクロソフト ビジネスプラットフォーム統括本部ビジネス&モビリティ本部デバイスソリューション営業本部デバイス営業部の後藤昌宏氏と日本マイクロソフト コーポレート営業統括本部公共営業部の安野仁氏によれば、「通信環境はLTEでなく、3Gでようやく接続できるレベルでした。特に中継に必要となる上りの帯域での1Mbpsを確保するのも困難でした」という。

 こんな環境で、安定して映像を配信するためにどうしたか。当初用意したSurface RT+Windows 8.1のWindowsストアアプリ版でなく、より処理パフォーマンスの高いデスクトップ版の「Office 2013 Lync Client」(現在はOffice 2013 Skype for Business Client)+Surface Pro 3を使うことで配信品質がかなり改善したようだ。合わせて、炎天下に端末を置いていたことで熱暴走し、パフォーマンスや映像の品質が落ちることも判明。手をかざし、日傘を差して対応した。

photo 甑島での中継の裏側。NTTドコモの一般通信網を使ったWi-Fiルータ+Surface Pro 3という中継システムだ
photo 炎天下に端末を置いていたことで熱暴走し、パフォーマンスや映像の品質が落ちることも判明。日傘を差して対応した

 ──こんな屋外中継ならではのエピソードとともに、細かい積み重ねだけでも品質はかなり改善され、式典中継に使えるまでSkype for Businessはポテンシャルがあることが分かった。

 結果として、式典の中継そのものはつつがなく進行して成功を収めた。通常のテレビ程度の画質での遠隔中継を可能にしたSkype for Business+Surfaceでの中継システムは、式典に関わった薩摩川内市関係者からも好評を得たと両氏は説明する。

 現地では、特別な中継装置を使わずに一般的なタブレットと携帯電話回線だけで中継を行ったことに関心が集まり、またOffice 2013 Lync Clientの複数拠点同時中継のユーザーインタフェースが物珍しいのか、メイン会場に設置されたSurface Pro 3の画面を来場者がちょこちょこ覗いていく姿がよく見られたという。

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