両社が共同で展開するWatsonエコシステムでは、日本で利用可能なAPIを提供することにより、日本の起業家や開発者でもWatsonのアプリケーションを開発できるようになる。今後は法人向けだけでなく個人向けでもWatsonの活用を進める構えだ。
ただ、このWatsonエコシステムにおいて、グローバルおよび今回日本で初期に選定されたパートナーの顔ぶれを見ると、IBMの明らかな意図を感じる。グローバルでの主要なパートナーについては、ローディン氏が会見で示した図をご覧いただきたい。
また、日本での初期パートナーは、伊藤忠テクノソリューションズ、カラフル・ボード、クレスコ、ジェナ、シグマクシス、ビッグデータロボ、FiNC、ブレインパッド、ロココの9社だ。
これらの企業の顔ぶれを見て気づくのは、まだあまり名は知られていないが、ビッグデータ活用などの分野では存在感を増しつつある新興企業が多いことだ。実際、ローディン氏もグローバルでのパートナーをいくつか紹介する中で、このパートナーはこんなユニークなことをやっていると楽しげに説明していた。
IBMはこうしたパートナーに何を求めているのか。それはまさしく、Watsonを活用した新しいビジネスアイデアである。このパートナーはこんなユニークなことをやっていると説明したローディン氏が、そのたびに「こんな発想はIBMだと思いもつかない」と話していたことからもそれが見て取れる。
では、パートナーはIBMに何を期待しているのか。この点については、初期パートナーに名を連ねるブレインパッドの草野隆史代表取締役が、エンドースメントの中でこう語っている。
「Watsonが提供する高度な自然言語処理能力は、データをビジネスにおける価値へと変換する新たなエンジンになると期待している」
つまり、Watsonは「データをビジネス価値に変換するエンジン」になり得るというわけだ。
IBMの最終的なターゲットもこの点にあるのは明らかだ。だからこそ、Watsonを活用した新しいビジネスアイデアを具現化してくれる新興企業とパートナーシップを組み、その連携効果を最大限生かせるようなWatsonエコシステムづくりに注力しているのだと見て取れる。まさにIBMの深謀遠慮を見た思いである。
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