スマホへ分散保管 盗まれても漏えい防ぐAONT型暗号化ソフトにWindows版マイナンバー管理対策にも

TCSIが秘密分散法を採用したデータ暗号化ソリューションのWindows PC版を発表。ファイルを意味をなさないデータへ変換かつ分割し、1辺を外部ストレージへ分散保管することで、仮に盗まれても漏えいしない仕組みを実現できる。

» 2015年08月05日 20時00分 公開
[岩城俊介ITmedia]
photo PASERI for PC

 TCSIは8月5日、情報漏えい対策ソリューション「PASERI」のWindowsインストール版「PASERI for PC」を発表。2015年9月1日に発売する。

 昨今の標的型攻撃は「もはや完全には防げない」ほど手口が巧妙化している。その対策は「情報は盗まれるもの」として進める必要性も叫ばれている。一方で、モバイルやクラウドの技術革新によって働く場所や使うデバイスを問わない働き方の改革も進んでおり、業務デバイスを安全に社外へ持ち出すための仕組みも強く求められている。

 PASERIは、AONT方式(秘密分散法)を採用したファイルの暗号化ソリューション。情報を意味のないデータに変換、分割し、一片を内蔵ストレージへ、もう一片をUSBストレージやスマートデバイスなどの外部記憶装置、あるいはboxなどのパブリッククラウドストレージへ保管する。

photo ファイルを分割し、1片をスマートデバイスやウエアラブル端末、USBデバイス、クラウドストレージなどへ分散保管。USBやWi-Fi、Bluetoothなどの方法でPCとつなぐとファイルが復元される(読めるようになる)

 鍵を解読されると漏れる可能性のある公開鍵を使う方式とは異なり、それぞれが意味のある情報でないため、万一どちらかの分割片が盗まれても、中身は復元できない。結果としてユーザー部門側のシンプルな作業のみで情報の漏えい対策を強固にできるとするのが特長。リリース済みのアプライアンスサーバ版に続き、Windowsクライアント版を用意し、例えばモバイルワークを率先する企業や従業員向け、マイナンバー制度のための特定個人情報管理PC向けとしてのさらなる需要を見込む。

 価格は、1000ユーザー以下の場合でサブスクリプション型が1ライセンス9600円/年、パーペチュアル型が1ライセンス4万5000円(2年目以降、保守料10%/年)。1001ユーザー以上はボリュームディスカウントも用意する。


マイナンバー制度とは

 マイナンバー制度は、2013年5月24日に成立した「マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」によって、複数の機関に存在する個人の情報が「同一の人の情報である」ことの確認を行うための基盤である。2016年1月に開始する。

 国民一人ひとりに固有の12ケタの番号の「マイナンバー」を割り当て、それに基づき国民の生活や収入など各自の事情に応じた行政サービスの迅速化を図る目的で導入される。主に(当初は)、社会保障制度(年金、医療、介護、福祉、労働保険)、税制(国税、地方税)、災害対策に関する分野に使われる。2015年10月5日よりマイナンバーが付番された通知カードが国民一人ひとりに届き、個々の申請手続きによって個人番号カードが交付される。

 利用機関は行政機関や自治体などだが、社会保障や税に関する帳票や届出への記載に必要な従業員のマイナンバー収集や以後の管理は個々の民間企業、ないしその委託先が担う。例えば、税分野では、税務当局へ申告する各企業が番号の収集と管理を行い、給与所得の源泉徴収票などさまざまな帳票へ記載する対応が必要となる。基本的には、すべての民間企業や団体が当てはまるものとなる。

 マイナンバーを含めた個人情報は「特定個人情報」と定義され、取り扱いが厳格に規定される。これまでの個人情報保護法では対象外(5000件以下)の事業者であっても、それを1件でも取り扱うならばマイナンバー法における「個人番号関係事務実施者」となり、規制の対象になる。罰則も個人情報保護法より種類が多く、法定刑も重くなっている。一例として、正当な理由なく業務で取り扱う特定個人情報を提供した場合「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科せられることがある。

 マイナンバーの取り扱いにおいて民間企業は「必要な範囲を超えて扱わない」「情報漏えいしないよう安全に管理する」「取り扱う従業者を教育、監督する」「委託先を監督する」などの義務や責務を負う。具体的にはマイナンバー制度の開始までに、マイナンバーの収集において厳格な本人確認を行うシステム、情報漏えい防止のための安全管理処置を講じること、そのための社内ITシステム改修やポリシーの制定、改訂を行っていく必要がある。データ保護の方法については、例えば「データの暗号化」や「パスワード保護」、そして「暗号鍵やパスワードの適切な管理」を行うようガイドラインで示されている。

 マイナンバー関連業務をアウトソースするにも、その委託先(その委託先の委託先も含めて)が適切かつ安全に管理、運用しているかを自社が監督する義務がある。漏えい事故が発生すれば、自社も罰則の対象になる。アウトソーシングサービスの選定も、マイナンバー法施行に対応した安全、確実な対応と対策手段を設けている事業者かを見極める必要がある。



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