業務部門から「セルフサービスBI」を導入してほしいと言われたときに、これまで使ってきた従来型のBIツールを捨て、セルフサービスBIに切り替えるべきか悩む企業は多いが、“二者択一”の問題ではなく、両者を並立させる使い分けが重要なのだという。
昨今、業務部門が情シスに頼らず、自らデータ分析やリポート作成を行う「セルフサービスBI」が注目されている。あらためて「セルフサービスBI」とは何かをガートナー ジャパンの堀内秀明氏に聞く本インタビュー。後編は、セルフサービスBI導入時に気を付けるポイントやBIツールの今後について聞いた。
業務部門から「セルフサービスBI」を導入してほしいと言われたときに、情報システム部門はどうすればいいのか。堀内氏は「ツールに目が行き過ぎると、本質を見誤ることがある」と強調する。
業務部門から「新しいツールを使いたい」という要望が上がってくるのは、既存のシステムで提供されるリポートや分析機能に不足を感じているからだろう。しかし、その原因がツールにあると決めつけるのは早計だ。原因がデータそのものやシステム間連携の不備にあるケースも少なくない。そもそもデータが分析用に整備(データクレンジングなど)されておらず、必要な分析が行えない場合には、単にツールだけを変えても結果は変わらないのだ。
「一般的な傾向として、一部のパワーユーザーが“新しいツールを使いたい”と言ってくる場合は、ツールの変更でニーズを満たせるケースが多いですね。彼らの多くは新たな機能や分析方法を求めているわけです。逆に、多くのユーザーが現在のシステムに不満を持っているような場合は、ツールではなくデータ自体に問題があると考えた方がよいでしょう」(堀内氏)
では、こうした“落とし穴”を越え、必要なデータがそろい、セルフサービスBIで課題解決ができそうだという見込みが立った場合はどうだろうか。これまで使ってきた従来型のBIツールを捨ててセルフサービスBIに切り替えるべきか、悩む企業は多いそうだ。
堀内氏によれば、「両者は二者択一ではなく、結論としては従来型のBIツールも運用しつつ、セルフサービスBIを買い増しするのがベストであるケースが多い」という。もちろん、新しい製品を導入せず、既存製品に手を入れて解決する方法や、従来型のBIとセルフサービスBI双方の機能を備えた製品に乗り換える方法も考えられる。
その理由は、セルフサービスBIを導入するとしても、従来型のBIツールでやっていた業務が不要になるわけではないという点にある。堀内氏は「バイモーダル(Bimodal)」という考え方で各ツールの役割を整理することを勧める。
バイモーダルとは、近年米ガートナーが提唱している、情報システムをその目的や扱うデータ、技術によって“2つのモード”に分けて考えようというコンセプトだ。1つは従来の基幹システムのような「品質」や「堅牢性」を重視するモード、もう1つはデジタルを取り入れた商品やサービスのためのシステムなど、変化に合わせて柔軟に素早く対応することを重視するモードである。
「従来、日本のシステム開発は品質重視で、きっちり作るという方法論が主流でした。これはこれで非常に大切で、今後も特定の領域においては必要です。ただ、変化の速い領域では、去年の“きっちり”が今年になったらそうでもなくなっている――ということも多々ありますから、品質よりも変化に対応できることの方が重要です。
企業としてはどちらのモードも必要だと理解し、CIOは2つのモードをつなぐ指針を持たなければなりません。BIに関しても『バイモーダル』の考え方が有効で、定型リポートやダッシュボードなど、常に同じ形式で正確なデータを出すことが重要である部分と、変化への柔軟な対応が価値を生む部分とを見極め、従来型のBIツールとセルフサービスBIのどちらで何をするかを決めることが必要なのです」(堀内氏)
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