セルフサービスBIの市場はここ数年で著しく成長しており、さらなる普及が見込まれる。とはいえ、今後は「セルフサービスBI」という言葉自体がなくなるかもしれない。ガートナーでは近年、セルフサービスBIではなく「データ・ディスカバリーツール」という言葉を使っている。これはデータから有効な知見や洞察を得ることに重点を置く考え方だ。
「“セルフサービス”というと、『IT部門は何もしません、ユーザー部門で勝手にやってください』というネガティブな意味合いにとられてしまうことがありました(笑)。“データ・ディスカバリー”の方が積極的なイメージを持ってもらえますね。データ・ディスカバリーツールはセルフサービスBIツールと同義ではありません。ユーザー部門が自由に使えるという意味では同じですが、より広い概念なのです」(堀内氏)
現在、セルフサービスBIと呼ばれている製品は、一般的に構造化データを見やすいビジュアルで表現する点が特徴だが、データ・ディスカバリーBIの将来像としては、非構造化データも取り込んだうえで、予測モデルの作成や分析方法のレコメンデーション機能など、人の手が必要な作業を自動化する方向への発展が期待できるという。
ただし、そういったツールを導入した全ての企業が理想的な使い方ができるかというと、「多くの場合は難しい」というのが、堀内氏の見方だ。
「誰がデータを分析し、どう活用するかというのは企業の組織や文化によって左右され、数年で変わるのは容易ではありません。例えば、全社横断でマネジャー層全員にセルフサービスBIツールを使わせると決めたなら、そのための教育や評価をきちんとして、社内にデータドリブンな文化を根付かせる気概を持って取り組まないと意味がない。それがうまくできた一部の組織が、ベストプラクティスとして紹介されるようになるでしょう」(堀内氏)
企業の意思決定を支えるBIツールはまだまだ過渡期にあるのが現状だ。業務部門から相談されたときに慌てないために、情報システム部門もBIの最新動向を把握し続ける姿勢が欠かせないだろう。
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