現在、ツールの操作方法などの教育は、利用者のニーズやレベルに合わせ、以下の3つの方法で行っているという。
最初から分析したいことが明確な人は、少し教えればすぐに走り出す。しかしそういう人は一握りで、多くの人は操作方法を伝えただけでは活用までに至らない。そんな人たちをも動かすために、前田氏は“押しがけ”と称する活動も行っている。
「例えば、『このプロダクトでは、こんなリポートを活用しています』と事例を見せると『うちでも使える』と考えてくれる人はいます。また、分析結果をビジュアル化するのが得意でない人もいるので、そういった場合は、こちらで例となるリポートを作成してあげたりします。そうすると『今後はこのリポートを全員で見る』と決めて、すごい勢いで組織内に広めてくれる人もいます」(前田さん)
一度は利用を見送っても、周りの人が使い始めるのを見て気が変わる人もいるので、ツールを使いこなすかどうかは“長い目で見る必要がある”と話す前田さん。最近は教育の効果が認められ、習得への方針を変えたという。とはいえ、Tableauはライセンス数で利用料金が決まることもあり、ツールの利用権についてはシビアに判断している。
「新しい業務ラインに導入する際は、最低限、データの考察対象(メジャー)と、データを見る切り口(ディメンション)を整理したディメンションマップを書けるユーザーにしかTableauを使わせないようにしています。また、利用頻度が著しく低いユーザーからはライセンスを剥奪することもあります」(前田さん)
Tableauの導入から1年弱が経過し、ユーザー自身がひんぱんにデータを見る環境を整えたことで、社内には「ビジネスを数字で考える文化」が育ってきたという。
「われわれは37度問題と呼んでいるのですが、仮に体温が37度まで上がった場合は熱っぽい、40度はさらにまずい、そんな数字に対する共通認識を醸成し流通させることが大切です。現在社内では、“普段500が平均のところ、今週450に下がっている要因は……”というように各プロダクトのオーナーがビジネスのパフォーマンスについて、数字で会話できる人が増えてきています」(前田さん)
その結果、大きな目的であった“意思決定のスピードアップ”はもちろん、その精度についても格段に良くなっていると感じているそうだ。今後も取り扱うデータの種類を増やすとともに、日次で見られるようになったデータの粒度をさらに細かくし、リアルタイムに近づけていくことで、「データ活用の動きをさらに活性化していきたい」という。
このようにデータ分析の文化を社内に根付かせてきた同社だが、ここまでシューマッハ・プロジェクトが成熟するまでに、情シスやデータ分析の専門家が果たした役割も見逃せない。
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