中小企業のマイナンバー対応は「士業への委託と連携+できるだけ持たないを考えた実務」がキモになる。9回目は「マイナンバーを“持たない”クラウドシステムの活用方法」について解説する。
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
前回までに、企業が収集しなければならないマイナンバーには、従業員とその扶養親族以外に外部の取引先となる個人事業主の分があること、そして、その収集方法などを検討しました。
今回は、これら収集しなければならないマイナンバーをどう効率化するか、そして、保管から利用、提出までの全体を通したこれからの運用の部分を、「マイナンバーを(自社で直接)持たない」をテーマとするクラウドシステムの活用で考えてみます。
企業のマイナンバーの取り扱いで、最初に、かつ最大の関門となるのが「マイナンバーの収集」です。収集パターン別に考察しましょう。
2015年10月より順次、世帯主宛に簡易書留でマイナンバー通知カードが届きます。しかし、居住する市区町村の都合や、不在で受け取れなかったなど、マイナンバー通知カードが手元に届く時期は人それぞれと思われます。
会社としては、全員分がそろってから一斉に半ば強制的に収集する方法もあります。しかし「従業員本人の作業でマイナンバーを入力できる仕組み」があるならば、通知カードが届いた従業員から、従業員の都合も考慮しながらマイナンバーを収集していけます。
そこで活用できるのが、クラウド型のマイナンバー収集・管理システムです(こちらは第4回目でも概念を解説しましたので、併せてご覧下さい)。クラウド基盤を使うマイナンバー収集・管理システムの多くは、マイナンバーの持ち主である従業員本人が、本人および扶養親族のマイナンバーをブラウザ画面から登録できる仕組み(収集ツール)を用意しています。その多くは、PCはもちろん、スマートフォンやタブレットでの作業にも対応しています。
この仕組みでは、収集ツールから入力された情報はクラウド上のデータベースで一元管理されます。企業のマイナンバー責任者や担当者としては「マイナンバー情報を(自社のサーバには)持たずに管理」している状態となり、帳票作成時など、必要な時にのみマイナンバーを参照する運用方法になります。
税理士などにマイナンバーの取り扱いを委託する企業の場合も同じです。企業も税理士事務所も、それぞれマイナンバー情報を“持たず”に共有できます。それぞれ、自社からの漏えいや紛失といったリスク、そして新たに発生する機材コスト負担の心配をかなり解消できる仕組みと言えます。
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