國生さんが面接で得意だとアピールしたのは「文章力」。学生のときに運営していたテキストサイトが人気を博し(ネタ文章を書いていたという)、転職活動中もエッセイコンクールなどに投稿していた。「子供のころから物書きになりたかった」という彼女。コンサルタントとは一見……というより全く関係がなさそうな能力に興味を持たれたそうだ。
「面接官が“チョイ悪のナイスミドル”風でテンションが上がりました。結局、その方がポテンシャルの面を主張したことが決め手となり、半ばギャンブルだと言われながらの採用だったそうです。実際入社してすぐのころはかなりの問題児で、思い出すのも恥ずかしいぐらい。よく見放さずに育ててもらえたなと、懐の深い上司や先輩たちに感謝しています」(國生さん)
こうして國生さんは再び、コンサルタントの道を歩むことになった。入って1カ月ほどで、理系学生がコミュニケーションスキルを学ぶためのプログラムを企画するという、私立大学でのプロジェクトに出会った。そこで初めて仕事が面白いと感じたという。
「もちろんプロジェクト自体も面白かったのですが、終わってしばらくたったころ、大学関係のお客さまを訪問するという先輩コンサルタントから“一緒に来てくれない?”と頼まれたのです。たとえ新人でも、その分野の経験があれば頼られる。若いからと遠慮することなく、同僚と教え、教えられる環境にあるのが楽しいと感じましたね」(國生さん)
そんな彼女にさらなる転機が訪れる。ふとしたきっかけで、先輩に「物書きになりたかった」という話をしたところ、「クライアント先の社内研修で使うケーススタディを作ってほしい」と頼まれプロジェクトに参加。転職活動時にアピールした“文章力”が生きるときが来たのだ。
「クライアント先で現場の方にインタビューを行い、失敗談やトラブルをもとにケーススタディを作るのですが、初めて作ったストーリーが研修で使われたとき、読んだ人たちが涙ぐんでしまって……。架空の話なのに、それだけリアルに感じていただけたのだと思います」(國生さん)
その後も、さまざまなクライアントから“社内で本当に起こりそうなケースを作ってほしい”という要望を受け、リアルさを追求したケースを作っていた國生さん。ところが、会話や人物像がリアル過ぎると、今度は逆に、実際の出来事を想起させてしまい、「これは○○さんのことではないか……」という疑念を呼びかねないと、お蔵入りになったこともあるそうだ。
このほか、シミュレーションゲーム風に進行するストーリーを作ったり、ケースの作り方を確立させたりと、この分野を確固たる専門分野とした國生さん。彼女が次にとりかかった分野は“ソーシャル”だった。IBMが新たな戦略の1つとして“ソーシャルビジネス”を打ち出したとき、彼女は迷いなく“私、それは得意です”と手をあげたという。
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