第6回 オブジェクトストレージを解読する その特徴とは?クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(1/2 ページ)

クラウド時代において主流となっていくオブジェクトストレージを詳しくひも解いていきます。今回はその特徴について見ていきましょう。

» 2015年12月02日 07時30分 公開

この連載は……

 ストレージ技術は、クラウド/IoT時代を迎えて大きく役割を変えつつあります。

 様々な「非構造化データ」が無秩序に保存されてゆき、さらにかなり長期に保存する必要が出てきました。実は最新のデータセンターにおいてもデジタルデータの長期保存は大きな課題で、様々な新しい技術、新しい管理方法が考えられてきています。これはごく身近な個人のデータもそうです。スマホで撮った写真や動画、家族とのやりとりや記録、日記的メモやSNSのログなど、これらはいわばライフログ(人生の記録)になりつつある自分だけの大切なデータです。これらを数十年、百年単位で残していくにはどうすればよいのでしょう。

 この連載は「そのようなビッグデータ時代に最適なストレージとは何か」がテーマです。今後、トランザクションデータとアーカイブデータの二極化が起こります。特に無秩序に途方もない量のデータが生成されるこれからの時代には、低コスト、低消費電力、高拡張性、高検索性のストレージが求められます。そんな課題の解決方法を、最新IT技術も交えてできるだけ分かりやすく解説していきます。


 前回は、クラウド時代に求められる理想的なデータ保存について紹介しました。その主流となる「オブジェクトストレージ」について解説していきます。今回はそのはじめとして、オブジェクトストレージとブロック/ファイルストレージとの違い、また、どのような特徴があるかについて体系的にご紹介しましょう。

ストレージの違いを理解する

 まだ比較的新しい概念のオブジェクトストレージは、従来のブロックストレージやファイルストレージとは異なる特徴を持ちます。データの記録や読み書きの仕組みではブロックストレージがディスクのブロック単位、ファイルストレージがファイルレコードの単位で行われるのに対して、オブジェクトストレージはデータオブジェクト単位で行います。

 オブジェクトの単位は、データとそのデータの意味を理解できるようするためのメタデータのセット(「パッケージ」や「コンテナ」のようなものとも言えます)になります。一方、ブロックストレージでは記録メディア側にメタデータを持ちませんし、ファイルストレージではメタデータをストレージ側に持つものの、個別のデータではなく一カ所もしくは複数の場所にまとめて配置されます(下図参照)。

オブジェクトストレージ 図:それぞれのメタデータの場所と配置の関係

オブジェクトストレージの3つの特徴

 オブジェクトストレージにおける特徴を示すと、以下の3つを挙げることができます。

1.シンプルアクセス

 データにはプログラムからのダイレクトかつシンプルにオブジェクト単位でアクセスできます。RESTful API※1によってデータのやり取りができるほか、ワイド、フラットなネームスペース※2へ(から)簡単にオブジェクト全体をアップロードしたり、ダウンロードしたりも可能です。大量の(ほぼ無限の)オブジェクト数を記録できる設計になっています。

※1:RESTful API……Representational State Transfer(REST)は、HTTPのPOST、GET、PUT、DELETE、およびPATCHを使用してリソース上で実行された基本的なCRUD(生成、読み取り、更新、削除、およびパッチ)操作を使用するWebサービス

※2:ネームスペース……名前空間とはDNSのドメイン名を格納している構造であり、「.」(「ルート」と呼ばれる)を起点としたツリー構造で表される。(関連リンク


2.多数のデバイスと接続

 従来のコンテンツでも、これから出てくる新しいコンテンツでも、共通の方法でアクセスできます。アプリケーションのデータアクセスはHTTPで行うため、どのようなネットワークを経由しても、世界中どこからでもアクセス可能です。

3.データ管理方法の進化

 メタデータによってデータの保存方法が変わります。個別タグの作成やコンテンツデータから生成されるデータを追加できます。また、データの探し方も変わり、従来のようにデータが「どこにあるか」ではなく、「それが何か」で検索、読み出しを行えます。

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