スピード経営時代に効く、「アプリ・サービス開発」の新潮流

営業が作る業務改善アプリ、アジャイルで高速開発――三井住友海上の事例現場の「ほしい」をすぐ実現(1/3 ページ)

ビジネス部門がアプリ開発を主導するケースが広まりつつある中、三井住友海上でも業務効率化や情報共有のための多数のアプリを開発している。その取り組みを聞いた。

» 2015年12月09日 07時00分 公開
[國谷武史ITmedia]

 損害保険大手の三井住友海上火災保険は、経営戦略の中でITをビジネスの成長エンジンに位置付ける。特にユニークなのが、ビジネス部門による業務効率化や情報共有のためのアプリケーションやツールの内製開発ユニットがあることだ。

現場の課題を解決する体制に

 同社は2015年4月、営業企画部に「営業IT推進室」を設置した。営業企画部部長で営業IT推進室長を兼務する松村隆司氏によると、従来は営業推進部内の組織だったが、経営戦略の一環としてこの春から企画部門に配置されることになった。松村氏は長く本社や全国の営業現場を経験し、4月から現職を務める。営業畑の同氏が代理店向けICT企画部署の責任者となる体制にもユニークさが垣間見える。

 営業IT推進室はこれまで業務の現場が抱える課題の解決や効率化を支援するための機能をExcelのマクロで開発してきたという。定型化されている業務であっても、実際には細かい作業や正確性が求められる部分でマンパワーに頼らざるを得ないところもあり、マクロツールで自動化・効率化してきた。同社ではこれらのツールを「ワンクリックツール」と呼び、営業や損害サポート部門を中心として全社的に活用されているという。

「ワンクリックツール」の1つ。証券番号から契約を照会、お客様の情報を引込み、封筒にあて名を印刷できる

 「部門としては以前から存在していましたが、社員の役割拡大に向けた会社の施策にともなって、社内の業務効率化にも主眼が置かれてきました。それが『ITが競争の源泉になる』という全社の認識へと変わり、高いレベルの競争力を実現していくために、ビジネス側に開発機能を持つことの重要性がより高まったわけです」(松村氏)

 基幹システムをはじめとする業務の中核を担うアプリケーションの企画や開発は、一般的な企業と同様に三井住友海上ではIT推進部が担い、グループ企業のMS&ADシステムズが開発している。営業IT推進室は、IT推進部やMS&ADシステムズと連携しながら、現場ニーズに直結する簡易システムの開発を担う。本格的な業務システムの導入には長い時間と膨大な予算や人的リソースが必要になるため、営業IT推進室での開発は、本格的なシステム開発では拾いきれない業務の現場が「いますぐにほしい」というアプリやツールがメインだ。

 システム部門出身で営業IT推進室課長 ビジネス開発ユニットの馬頭陽介氏は、「ビジネス部門には代理店向け施策といったようなビジネスに関わる様々な情報が集約されますので、そこで必要なものを自ら提供できるようになります」と話す。本格的なシステム開発では難しい、機能追加や修正などのトライ&エラーの繰り返しもビジネス部門側なら取り組みやすく、そのスピードも圧倒的に速いという。

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