2016年のIT市場はどうなるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年12月21日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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キーワードは「デジタルトランスフォーメーション」

 IDCはまた、「2016年版 世界と国内のIT市場に関する予測」も先頃発表した。毎年この時期恒例の市場予測だが、今回は新年の2016年だけでなく、向こう5年ほどの動向も見据えたレポートになっている。10項目の予測からなるそのキーワードと内容は、表の通りである。

 10項目の予測の1番目に掲げられているキーワードは「デジタルトランスフォーメーション」である。この言葉がIT市場における2016年のキーワードになるのは間違いないだろう。今回のIDCの予測を見ると、2〜10項目の内容は全てデジタルトランスフォーメーションの中身を説明しているようにも受け取れる。

キーワード 内容
デジタルトランスフォーメーション(DX) 2017年末、G2000企業のCEOの3分の2が、DXを企業戦略の中心に据えるようになる
第3のプラットフォームIT 2017年には国内企業のIT支出額の33%以上が第3のプラットフォーム技術、ソリューション、サービスに費やされ、2020年には45%を超える
クラウドコア 2017年までに、国内IT支出の20%以上はクラウド関連となり、2020年にはITインフラストラクチャ支出の30%以上、ソフトウェアおよびサービス支出の40%以上となる
イノベーションキャパシティ 2018年には世界中のDX戦略を追求する企業で、ソフトウェア開発能力が今の2倍以上に伸び、プログラマーの3分の2が戦略的DXアプリケーションおよびサービスを手掛ける
社内外の「データパイプライン」 2018年、戦略的なDXイニシアティブを実施する全世界の企業では、外部から社内へのデータソースの数が今の3〜5倍以上に増加し、市場へのデータの配信量は100倍以上に増加する
インテリジェントエッジ 2018年にはIoTデバイスの設置台数が国内市場で9億台となり、20万以上の新しいIoTアプリケーションおよびサービスの開発につながる
あらゆるものの認知 2018年には世界の50%以上の開発チームが、何らかの認知サービスをアプリケーションに埋め込むようになる(現在1%未満)
産業特化型クラウドプラットフォーム 2018年には世界の50%以上の大企業が、自社のイノベーションの流通、他社のイノベーションの調達に役立つ産業特化型クラウドプラットフォームを開発するか導入する
大規模な“親”顧客戦略 2018年には世界のB2C企業の80%、B2B企業の60%が「デジタルフロントドア」を抜本的に再構築し、今より1千〜1万倍も多い顧客および顧客接点をサポートするようになる
サプライヤーとパートナーの再選別 2020年には今日存在している全世界のITベンダーの30%以上が姿を消す。そのため、優先すべきベンダー関係を慎重に見直す必要がある

IDC Japanによる「2016年版 世界と国内のIT市場に関する予測」

 なお、IDCは2016年1月下旬に、国内IT市場の重要な予測について、あらためて発表するとしているので注目しておきたい。

 筆者も2016年の国内IT市場を見据えて、予測というより思いつく点を3つ挙げておきたい。

 1つ目は、「IoT(Internet of Things)から生まれるビッグデータの効果的な分析(アナリティクス)に向けてAI(人工知能)技術を駆使したIT活用が一段と加速する」ことだ。まずは単に、IoT、ビッグデータ、アナリティクス、AIというキーワードを使って今後のIT活用を表現したかっただけだが、これがつまりはデジタルトランスフォーメーションのミソになるのは間違いないだろう。

 2つ目は、「システムインテグレーター(SIer)はデジタルトランスフォーメーションの波に乗り遅れることなかれ」である。先に触れたように、国内IT市場は今、大型のSI案件が目白押しの状態だ。ただ、そうした案件の多くは、デジタルトランスフォーメーションとは関連性があまりない。したがって、案件に携わっている多くのエンジニアが最新技術に乗り遅れかねない。これがひいては日本のSIerのグローバルでの競争力の低下につながらないか、危惧されるところだ。

 3つ目は、「マイナンバー制度の実施がIoT時代到来の意識を高める絶好の機会になり得る」ことだ。2016年からのマイナンバー制度の実施は、国内IT市場にとっても非常に大きな出来事になる。国民一人ひとりに関わる話だけに、IT活用をより身近に感じるものとなろう。できればIoT時代到来の意識を高める絶好の機会にしたいところだ。

 IoT時代到来の意識を高めるとはどういうことか。それは利便性もさることながら、セキュリティ対応への意識を強く持つことだ。これまでセキュリティについて触れてこなかったが、2016年はかつてないセキュリティ脅威にさらされる可能性が高い。これには企業もさることながら、国民全体の危機意識を高めなければ立ち向かえない。マイナンバーの導入がその契機になれば、というのが、予測というより筆者の願望である。

 来る2016年も本コラムではできるだけ多様な見方を読者の皆さんに提供できるように努めていきたい。良いお年をお迎えいただきたい。

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