IBMとVMwareとAppleが一堂に会する意味――AWS対抗に変化IBM InterConnect 2016 Report(2/2 ページ)

» 2016年02月23日 15時00分 公開
[國谷武史ITmedia]
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ビルが話しかけてくる?

 InterConnectの基調講演ではまた、独SiemensがIBMのWatson IoTを活用したビル管理のソリューションで協業することも発表された。Siemensは高度なビルエネルギー管理システム(BEMS)による環境負荷の低減化といった価値をビルオーナーに提供することで、不動産の新たな魅力を引き出したいという。

 Siemensビルテクノロジー部門CEOのマティウス・レビリウス氏によれば、同社は30万カ所の物件にBEMSを導入し、そのうち約10万カ所ではインターネットに接続している。ビルで使用される空調や電力などのエネルギーに関する膨大なデータを蓄積し、効率的なビル管理の実現とエネルギー消費の低減化に取り組む。

BEMSで協業を本格始動させるSiemens

 「いまやビルはシステムであり、IoTによってビルが私たちに話しかけてくる。どこにどのようなストレスがあり、今日の天候に最適な環境設定はどうすべきか、経年変化でどこが弱まっているかといったことが分かる」

 ビルに伴う総コストの約70%が運用に関するものであり、特に20%近くを占めるエネルギーのコストは大きなポイントになる。「大手企業ならビルに関するコストが損益計算書において2番目に高い比重となることから、その最適化が求められている」とレビリウス氏。

 BEMSを通じて得たデータの分析から、ビル管理コストの節約効果は約1億4000万ドルになり、年間の二酸化炭素排出量も約1000万トンの削減につながるとみている。近い将来には、蓄積データから予測分析に基づく効率的なエネルギー使用や設備の可用性維持といった総合的な不動産価値の向上につなげていきたいとした。

クラウドとますますつながる

 日本でもおなじみとなり始めたコグニティブ(認識)技術についてルブラン氏は、2020年までにエンタープライズソフトウェア企業トップ100のうち95%が採用するとの見通しを示す。基調講演ではWatsonに接続する新しいAPIとして「tone」(調子)「emotion」(感情)「vision」(視野)の提供も発表し、人間の高度な表現をマシンが認識可能にしていくことを表明した。

Watsonがヒトの微妙な感覚を認識する日が近いうちに来る?

 また、ソフトウェア群のクラウドへの拡張をより拡大させるべく「IBM Cloud Connectors」という新しいブランドもリリース。その中核に位置付ける「IBM WebSphere Cloud Connect」は、既に開発されている数十億ものWebSphereベースのアプリケーションやデータを容易にクラウド環境へ展開できるようにするという。ビジネス化も強く期待されるブロックチェーンではBluemixを利用する新興企業向けに、ブロックチェーンに関するリソースを提供していく方針も明らかにした。

 この他に開発した新しいアプリケーションへのデータの取り込みを高速化するクラウドサービス「Open for Data」も発表している。さらにはGitHubとの協業により、GitHubの企業向けサービスもスタート。「GitHubをファイアウォールの外でも中でも利用できるようにする」(ルブラン氏)と明らかにしている。

 InterConnect 2016の初日は、会場ではVMwareとの戦略的な協業の実現やAppleとのパートナーのBluemixへの拡大が来場者の関心を集めたが、クラウドへのシフトを打ち出すIBMが開発者を巻き込んだ同社流のクラウドの世界感を強く打ち出した格好だ。ルブラン氏は、価値を創造するクラウドが備えるものに(1)一貫性のある選択であること、(2)ハイブリッドであり統合化されていること、(3)DevOpsに高い生産性をもたらすこと、(4)データへのアクセス性が確保されていること、(5)コグニティブによって生身の人間とつがなること――の5つを挙げる。日本からの来場者の1人は、「AWSの勢いを意識したこれまでの様子とは違う印象を受ける」と話していた。

ルブラン氏が掲げたクラウドにおける“5つのオキテ”
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