マイナンバー2015

マイナンバー対策、「収集」「保管」「廃棄」の落とし穴(1/3 ページ)

ノークリサーチの調査によれば、万全の運用体制でマイナンバー対策を行っている企業は、実はまだ少数派であり、中小企業を中心に対策途上の企業も多いという。これから始める企業は、どこに注意すればいいのか。ノークリサーチのシニアアナリスト、岩上氏に聞いた。

» 2016年03月30日 07時00分 公開
[富樫純一ITmedia]
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 2016年1月、ついにスタートしたマイナンバー制度。今、どれくらいの企業が対応を済ませているのだろうか。ノークリサーチが1月に実施した調査によると、マイナンバー制度への対応を「既に終えた」とするのは少数派で、特に中堅・中小企業の対応が進んでいないことが分かったという。

 なぜ、対応が進まないのか、これから対応する企業はどのような点に注意すればいいのか――。ノークリサーチのシニアアナリスト、岩上由高氏に聞いた。

中堅・中小企業のマイナンバー対応が進まない理由

 ノークリサーチの調査は、2016年1月に中堅・中小企業(年商500億円未満)を対象に行ったもの。岩上氏は、中堅・中小企業におけるマイナンバー制度への対応は、当初想定していたよりも遅れていると話す。

 「調査では、マイナンバーの取り扱い担当者の任命が完了している企業は6割弱(57.4%)、関連文書の作成/周知が完了している企業は約半数(48.0%)という結果になっています。これらの項目は、本来ならばマイナンバー制度の開始までに対応を終えていなければなりません。しかし調査結果を見る限り、中堅・中小企業におけるマイナンバー制度への対応はかなり遅れているといえます」(岩上氏)

Photo 中堅・中小企業におけるマイナンバー制度への対応状況(出典:ノークリサーチ Quarterly Report 2016年冬版)

 岩上氏によれば、企業がマイナンバー制度への対応に取り組み始めるトリガーとなるのは、経営者、人事・総務部門、IT部門、顧問契約を結ぶ会計事務所などであり、まずはトリガーとなった部署や人が周囲を巻き込んで、マイナンバー関連業務に携わる担当者を任命しなければ対策は始まらないという。

 その上で、担当者が中心となって安全管理措置やマイナンバーの収集目的などを記載した文書を作成し、明記した文書を従業員に提示することが必要となる。

業務で利用するギリギリまで対応を見送る企業も

 マイナンバーの取り扱い担当者を任命し、関連文書の作成/周知が完了したら、次に行うのがマイナンバーの収集だ。ここにいきついている企業の割合は低く、調査結果によるとマイナンバーの収集/廃棄、あるいはマイナンバーの保管が完了している企業は共に3割強(34.9%)にとどまっている。

 マイナンバーは、2015年10月に通知カードの発送が開始された時点から収集が可能となり、当初はマイナンバー対応ソリューションを提供するITベンダーやマイナンバーを扱う会計士、社労士を中心に「2015年10月がマイナンバー制度対応のデッドライン」という声も挙がっていた。にもかかわらず、なぜ、企業のマイナンバー対応は進んでいないのだろうか。

 岩上氏はその理由について、「企業が従業員のマイナンバーを本格的に利用するのが年末調整の時期であるため」と分析している。2016年1月からの給与・支払に関する源泉徴収票がマイナンバー制度の対象だが、この源泉徴収票の税務署への提出期限は2017年1月末。つまり、「2017年1月末までに全従業員のマイナンバーを収集できればいい」という認識が対応の遅れを生んでいるとみる。

 「少なくとも現段階では『マイナンバー制度が始まった2016年1月の時点で、マイナンバーを収集しなければならない』というわけではありません。従って、“税務署提出用の源泉徴収票にマイナンバーを記載する”といった、実際に利用する業務場面が生じるまでは対応を見送る、という企業も少なくありません。小規模企業の中には、『使う前のギリギリまで収集を遅らせて保有期間を短くし、漏えいリスクを軽減したい』という企業もあります」(岩上氏)

 とはいえ、年末調整の時期を待つまでもなく、退職者の源泉徴収票にはマイナンバーが必要となる。そのため、「マイナンバーの収集・保管、利用が必要になったタイミングで急いで対応するという企業も出てくる」(岩上氏)というのが岩上氏の見方だ。

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