マイナンバー2015

社員40人の企業が3日でマイナンバー対応準備を済ませるまで考えるよりまずは動くこと(1/3 ページ)

2016年1月から各種の行政手続きで必要になる「マイナンバー」。対応が急務となっているが、まだ対応できていないという企業も少なくない。今回、短期間でマイナンバーへの対応準備を済ませた企業の事例から「会社がすべきこと」「期間」「費用」を具体的に見てみよう。

» 2016年03月01日 07時00分 公開
[高橋美津ITmedia]
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 2016年1月からスタートした「マイナンバー制度」。各種の行政サービスを受けたり、軽減税率の適用に利用される可能性があったりと、国民全体の生活に関わる新たな制度として関心が高まっている。

 このマイナンバーを従業員から受け取り、各種の手続きや申請に利用しなければならない会社においても、マイナンバーへの「対応」は急務となっている。個人情報と直接関連づけられるマイナンバーの取り扱いは「番号法」によって定められており、違反した場合の罰則も厳しく定められている。適切なマイナンバーの「収集」「管理」「利用」を行っていなかったことが原因で、番号が漏えいすれば、行政による指導や命令を経ず、直接、懲役や罰金が課せられ可能性もある。

 マイナンバーの利用範囲は、制度の開始時点では「社会保障」「税」「災害対策」の各分野に限定されている。会社においては、従業員の社会保険や雇用保険の加入手続き、給与所得の源泉徴収票や各種支払調書を行政機関などに届け出る際に、従業員のマイナンバーを記入することになる。この届出は正社員やその扶養家族だけでなく、契約社員やパート、アルバイトに関しても行う必要があるため、あらゆる規模の会社でマイナンバーを取り扱うことになる。

 内閣官房発行の広報資料では、企業に対しては2015年中に、マイナンバーに対応するための社内規定の見直し、システム対応、社員教育の準備などをはじめ、2016年以降には、申請書や申告書、調書といった公的な届出書類へのマイナンバー記載を開始することを求めている。とはいえ、特に従業員が数名から数十名といった小さな規模の会社では「マイナンバー対応といっても、何をどうしたらいいのか分からない」というところも多くあるのではないだろうか。

 今回、マイナンバー対応の準備を短期間で完了したあるソフト開発企業の事例から、「会社はマイナンバー対応にあたって、何をすればいいのか」「期間はどのくらいかかるのか」「対応支援を外部に委託する場合、費用はどのくらいかかるのか」について、大まかなイメージをつかんでみよう。

従業員40人規模のソフト開発企業における「マイナンバー対応」

Photo SCPソフトの代表取締役を務める秀嶋哲郎氏

 大分県大分市に本社を置く「SCP.SOFT」(SCPソフト)は、業務システムの受託開発に加え、その業務ノウハウをパッケージ化した業務ソフト「Vicsell」シリーズの開発、販売を手掛けるソフト開発会社である。大分のほか、東京と福岡に支社を持ち、パートを含めた従業員は約40人という規模だ。

 SCPソフトの代表取締役を務める秀嶋哲郎氏は、2014年頃から、自らマイナンバー対応に関するセミナーに参加し、対策の検討を開始。2015年に入ってから本格的に対応作業を行う必要性を感じ始めたという。「セミナーに参加する前は、マイナンバー対応といっても、どこからどう手を付けていいか分からない状況でした」と秀嶋氏は振り返る。

 「社内のルール作りをどうするか、運用をどうすべきかなど、考えなければいけないことが多いことは分かりました。また、番号法におけるマイナンバーの扱いには、以前の個人情報保護法のとき以上に厳しい罰則が設けられており、その対応はより慎重にやらねばならないと感じました」(秀嶋氏)

 SCPソフトでは勤怠管理、支払管理、調書作成などを含む業務システムを顧客に対して提供している。自社内だけでなく、顧客に提供するこれらのシステムにおいても、マイナンバーの取り扱いに対応していく必要があったのだ。

 一般的に、企業のマイナンバー対応にあたっては、まずマイナンバーに関する「事務取扱担当者」を決め、従業員に対して会社としてマイナンバー対応に取り組んでいることについて告知を行った上で、並行して以下の点を整理していくことになる。

  1. マイナンバーを取り扱う事務範囲の明確化
  2. 特定個人情報等の範囲の明確化
  3. 取り扱いルールの検討(取得、本人確認、保管、利用、廃棄の各フェーズについて)
  4. 安全管理策の検討と対策
  5. 基本方針の策定
  6. 取扱規定等の策定(取得、利用、保存、提供、廃棄の各フェーズについて)
  7. 委託先の監督等のルールの見直し
  8. 従業員への教育
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