2016年3月10日から13日にかけて、東京理科大学でBSD系のOSに関する国際会議「AsiaBSDCon 2016」が開かれました。この国際会議は、世界中のBSD系のOS技術者たちが集い、情報交換を行います。昨年、筆者は講演のために参加しましたが、今年も筆者が所属する日本ヒューレット・パッカード(HPE)のBSD、Linux、オープンソースの取り組みについて講演しました。
AsiaBSDConでは、BSD系のOSにおけるハイパーバイザ型の仮想化技術「bhyve」(ビーハイブ)に関するセッションがいくつもありました。BSD系のOSでは仮想化技術がホットな話題になっています。筆者の学生時代の環境は、FreeBSDとLinuxとWindowsのトリプルブートでしたが、いまやFreeBSDも「bhyve」やDockerでマルチOSの時代になりつつあります。現在も、世界中のFreeBSDコミュニティーによって「bhyve」やDockerについて議論されており、開発が進んでいます。BSD系OSには、サーバOSだけでなく電子機器などの「組み込みOS」としての歴史もあるため、最新のIoT向けの超小型マシン「Raspberry Pi」への対応も行われています。
筆者は今年もAsiaBSDCon2016でHPEのBSDやLinux、オープンソースの取り組みについて講演した。参加者にはBSDに関する論文集と景品が配られる。参加者にOS開発者が多いこともあり、FreeBSDの仮想化「Bhyve」の開発進捗状況、将来計画、Docker基盤を使った開発環境についても議論されるここまでで、DockerとBSD系OSがホットな関係にあることを少しは知っていただけましたか? 「でも、FreeBSDってなんだかマイナーそうだし、サーバが稼働するIT基盤で本当に使われているの?」という人がまだいるかもしれませんが、実はさまざまなITシステムで使われています。
大手のサービスプロバイダー企業ではスケールアウト型のWebシステムのサーバOSとして採用されています。その他にも、ネットワーク経由でのストレージである「NASアプライアンス」としてもBSD系のOSが採用されています。FreeBSDを使ったWebシステム系だけでなく、HPE ProLiantサーバを使ったNASのパッケージソリューションを提供している企業もあります。
少し宣伝になりますが、筆者の所属するHPEでは、HPE ProLiantサーバとFreeBSDの組み合わせに関する動作確認情報を「Linux/*BSD技術情報サイト」というWebサイトで公開しています。1999年にスタートし、2016年の現在も筆者とBSD系の技術者が一緒になって情報を更新しています。ここでの情報は、実は日本を起点に世界へ発信しているもので、日本の技術陣が東京都江東区大島にある日本ヒューレット・パッカード本社のラボ環境で動作を確認し、技術情報を執筆しています。ぜひ、お時間のあるときにWebサイトをのぞいてみてください。
Linux/BSD技術情報サイトは1999年から続く老舗のWebページ。BSDの技術情報は筆者を含む日本の技術者が更新し続けている。大量マシンへのBIOSやRAIDの全自動設定手順、FreeBSDの無人配備手順の技術文書も入手できる次回は、実際に「Docker on FreeBSD」の環境を構築し、動かしてみたいと思います。そこから何がみえてくるのでしょうか? お楽しみ!
日本ヒューレット・パッカード株式会社 オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト。兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国HPからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は日本HPにて、Linux、FreeBSD、Hadoopなどのサーバー基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator, Novell Certified Linux Professional, Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack, Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。
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