情シスが“女子高生AI”の使い手になれば、会社の利益が上がる!? そのからくりはMS西脇氏×NTTソフト安田氏エバンジェリスト対談(2/3 ページ)

» 2016年08月23日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
Photo 女子高生AIりんなとの会話。会話を深めていくような問いかけをしてくる

西脇氏 経費精算のときに、部長より女子高生から「おつかれさま」って言われる方がいいですよね。ちょっと不純ですけど、そういう要素がけっこう重要なんです。女子高生AIと今日の訪問先についておしゃべりしているうちに経費精算やCRMの入力が終わったら面白いでしょう?

 りんなは、そういう使い方を想定して、“会話を先に続ける努力をする”ように作られています。いわゆる「マルチターン」ですね。普通のAIは「明日の天気は?」と聞くと「晴れ」と返しますが、りんなは「明日、どっか出掛けるの?」と返すんですね。「東京まで」と言うと、「新幹線で?」と聞いてきて、「新幹線だよ」と答えると、「だったら晴れで良かったね」というふうに会話を進めるんです。そうすると、自然に詳しい情報がインプットされていくんです。こうして深い会話を続けることで、どんどん学習していくんですね。

安田氏 そうか、会話をしているうちに、CRMや経費精算システムの入力に必要なことを全部答えていたりするわけですね!

西脇氏 営業から戻ったら「どうだった? いくらぐらいもうかりそう?」と聞いてきて、「うん、うまくいったよ。2億円の案件で……」と返すと、「じゃあ、目標2億2千万に積み増ししちゃうね!」といわれて「が、頑張る!」みたいなね(笑)。

ビジネスやワークスタイルはITで誘導できる

Photo マイクロソフト エバンジェリストの西脇氏

西脇氏 りんなで考えるとちょっとふざけているみたいですが、少なくとも会話でビジネスを進めていく、つまりマルチターンで深層を探っていくUIとインプットの方法で、裏に人工知能があるシステムというのは、かなり現実的な話だと思いますよ。

安田氏 かなり早い段階で実現しそうですか?

西脇氏 Cortanaはマルチターンができ、Windows上で動くので、Windowsマシンに入っているたくさんの営業資料やスケジュール、メールの内容などを使って会話の要素を深くしていくことができます。つまり環境が整っているわけです。その点では、実現は間もなくといえるでしょう。ただ難しいのは、日本語の解析です。例えば「いい」というのが「良い」なのか「要らない」なのかといったことを理解するのが、日本語の場合は難しいんです。

安田氏 日本語という課題はあるもの、実現すると面白いですね。今までの情報システムでは、1回入れたデータは二度と入力しなくていいようにデータ連携で工夫するとか、そういう方向の努力はありましたけど、なるべくたくさんの情報をインプットしたくなるような仕掛けってなかったですよね。それができるようになると、仕事のやりかたはすごく変わるでしょうね。

西脇氏 そうなんです。AIにはワークスタイルをラクにしてくれるような提案を期待したいですね。

 私は情報システムの世界に20年くらいいますけど、メインフレームの時代も、“クラサバ”時代も、JavaがきてWeb3階層の時代になっても、作っているのは常に顧客管理システムでした。クライアントがスマホになって、グラフィカルなデータ集計ができるようになっても、やっぱり作っているのは顧客管理システム(笑)。でも、そろそろ仕事をラクにして、収益の向上をサポートしてくれるようなシステムが出てきてほしいですよね。AIを始めとするテクノロジーは、それを実現するエンジンになると確信しています。

安田氏 そういうシステムって、企業独自の強みや戦略を学習していかないといけないでしょうから、SIerが設計するのは難しいかもしれないですね。

西脇氏 確かに。そこはまさに、情シスの出番といえそうですね。ただ、今までの企業の情報システム部は、主に汎用的な仕事をしていたんですよね。他の会社でもやっていることを自社でもやるという状態。でも今後は、「どうやったらうちの会社はもうかるのか」「どうやったらうちの社員がニコニコしながらシステムを使えるだろうか」といったような、非常に個性的な活動をしていく必要がありますね。

安田氏 情報システム部って、会社の中で唯一“ITでビジネスを変えられる”ポジションにいますよね。ITをうまく使って、新しくシフトしたい方のシステムを使いやすくして、ちょっと意地悪して過去のシステムはすごく入力しづらくする、くらいのことはできちゃう。その発想でいくと、「こっちの方が仕事がラクになるから、うまく売り込んでみよう」となりますよね。経営企画部などがトップダウンで言ってもなかなか変わらないことはありますが、システムの良しあしは「ラクか面倒か」という人間的な感覚にダイレクトに関わるところなので、直接的に人の行動を変える力を持ってるんです。

西脇氏 昔はPCの画面とキーボードしかなかったから限界があったかもしれないけど、今はスマートフォン、タブレット、ペン、音声入力などが登場したので、“誘導する”チャンスがふんだんにあるわけですね。

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