F1チームに学ぶ、常に進化するプロトタイプでビジネスの未来をデザインしようIBM Edge 2016 Report(1/2 ページ)

ネバダ州ラスベガスで「IBM Edge 2016」が開幕した。Edgeでフォーカスされる同社のシステム製品は「コグニティブビジネス」の実現を支える機能が盛り込まれてきているという。ITのチカラで常に進化し続けるRed Bull Racingの顧客事例も紹介された。

» 2016年09月20日 10時45分 公開
[浅井英二ITmedia]

 今週、サンフランシスコではOracle OpenWorldカンファレンスが華々しく幕を開けたが、コンピュータ業界の巨人、IBMも米国時間の9月19日、カジノのメッカ、ネバダ州ラスベガスで「IBM Edge 2016」をスタートさせた。早朝から会場となったMGMグランドホテルのカンファレンスセンターには約5000人の顧客やパートナーが集まり、1000を超えるセッションが行われる。

 IBMはここ数年、既存事業を大胆に見直し、成長分野へのシフトを加速する。企業向けのクラウドコンピューティングやWatsonによるコグニティブコンピューティングで新たな市場を創造し、再び主導権を握ろうとしているのだ。Edgeカンファレンスがフォーカスするハードウェア分野でもPOWER8、メインフレーム、フラッシュストレージ、そしてSoftware Defined Storageに至るまで、同社のシステム製品は、コンピュータが自ら思考し、迅速かつ的確な意思決定を支援する「コグニティブビジネス」の実現を支える機能が盛り込まれてきているという。

システム製品を統括するトム・ロザミリア上級副社長

 この業界ではx86サーバのコモディティー化やクラウドコンピューティングの普及に伴い、ITインフラストラクチャーの価値が改めて問われてきたが、それらと比例するようにデータは爆発的に増加している。人の言葉や画像、動画のような非構造化データも理解し、推論や学習によって迅速でより確実な意思決定を支援してくれる新たなコンピューティングの時代には、データこそが企業の「資産」となり、競争力はそこから獲得される「洞察」によって左右されることになる。

 「世の中の90%のデータはこの2年間に生まれたものであり、80%は構造化されていないデータだ。しかも、60%は今すぐ活用するスピードが求められている」

 オープニングのジェネラルセッションでそう話すのは、IBMでシステム製品を統括し、Edgeカンファレンスのホストも務めるトム・ロザミリア上級副社長だ。膨大かつ多種多様なデータからスピーディーにビジネスの価値が引き出せるとすれば、それはゲームの流れを変える切り札になる。

 ストレージ製品を統括するエド・ウォルシュGMも「コグニティブビジネスはデータによって駆動される。そのスピーディーな活用は、業種や規模の大小を問わず、ビジネスの必須条件になった」と話す。

膨大なデータのスピーディーな分析が勝敗を分けるF1レース

展示フロアに持ち込まれたRed Bull RacingのF1マシン

 彼がステージに招き上げたのは、英国・バッキンガムシャー州ミルトンキーンズに本拠を置くRed Bull Racingだ。スピードを追求するF1レーシングで、2010年から4年連続でワールドチャンピオンに輝くなど、数あるチームの頂点に立つ。

 F1はその年のレギュレーションに合わせてマシンを開発すれば終わりではない。不具合もあれば、週ごとに19カ国を転戦し、レース場ごとに異なるパーツを組み合わせ、最高のパフォーマンスを叩き出せるように改良を繰り返す。

 「F1マシンは常に進化し続けるプロトタイプ。1シーズンを戦う中、エンジニアリングの変更は年間3万件に上る。データに基づく意思決定を次々と下し、シーズンを通して改良を繰り返していかなければならない」── そう話すのは、同社のマット・カデューCIOだ。

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