F1チームに学ぶ、常に進化するプロトタイプでビジネスの未来をデザインしようIBM Edge 2016 Report(2/2 ページ)

» 2016年09月20日 10時45分 公開
[浅井英二ITmedia]
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Red Bull Racingのマット・カデューCIO

 Red Bull Racingでは、マシンのデザインはすべてコンピュータの仮想世界で行い、パーツも3次元CADから直接作られる。テストもレギュレーションによってトラックでの実施が限られているため、かなりの部分をコンピュータによるシミュレーションで行う。また、マシンには約100個のセンサーが設けられていて、各地のトラックから送られてくる膨大なデータを英国のアナリティクスセンターで分析し、マシンの改良やセッティングから天候によるレースの戦い方に至るまで、得られた洞察を役立てているという。

 IBMとは2005年のチーム設立以来パートナーであり、Red Bull RacingのHPC環境、つまりスパコンのワークロードとリソースをIBM Spectrum LSFで効率的に管理し、より多くの分析やシミュレーションを行うために役立てているほか、IBM Spectrum Scaleによってデータに関するパフォーマンスを改善、今後はクラウドサービスも透過的に組み合わせてデータ容量を拡大していきたいとする。

 「われわれにとってITインフラストラクチャーは極めて重要。優れたインフラがなければレースを戦えない」とカデュー氏は話す。

変革期を勝ち抜くための3つのイノベーション

 IBMの調査によれば、CxOの72%は「テクノロジーこそが最も重要なゲームチェンジャー」と答えている。それは、UberやAirbnbが既存の業界を大きく変革してしまったのを目の当たりにしたからに違いない。「破壊されない業界はないだろう」とロザミリア上級副社長は付け加える。

 彼は、「変革期を勝ち抜くには、さまざまなイノベーションの組み合わせが必要だ」とし、テクノロジー、コラボレーション、そしてビジネスモデルという3つのイノベーションを挙げた。

 テクノロジーのイノベーションは分かりやすい。

 「フラッシュストレージは、これまで不可能だったことを可能にした。できるならやるべきだ。競合もやってくるからだ」(ロザミリア氏)

 彼がビデオで紹介したのは、Plenty of Fishだ。毎日400万人が出会いを求めて訪れるデートサイトの大手。新規登録者も毎日5万人に上るというから驚きだ。IBMのフラッシュストレージを導入し、ボトルネックを解消、迅速なマッチングで顧客満足度を高めることに成功している。より良い顧客体験のために今はアプリが重要になっており、これまでのようにストレージのせいにはできなくなったという。

 「デートの相手が見つからなくても文句は言わないでよ」とロザミリア氏もジョークを飛ばす。

 2つ目のコラボレーションのイノベーションは、いわゆるオープンイノベーションだ。GoogleやNvidiaを巻き込み、2013年に発足したOpenPOWER Foundationの成果も着実に現れてきており、それらを取り込むことでIBM Power Systemsの製品ラインも拡充してきている。先週も高速な相互接続のためのNvidia NVLinkをPOWERプロセッサに搭載した新しいPower Systems LCサーバを発表したばかり。NvidiaのGPUと直接接続することで人工知能、ディープラーニング、ハイパフォーマンス・データ・アナリティクスをはじめ、膨大な計算処理を必要とするワークロードを高速化できるという。

 IBMはまた昨年8月、Linux専用のメインフレーム「IBM LinuxONE」を発表しており、この7月にはLinuxONEによってブロックチェーンネットワーク用のセキュアな環境をクラウドサービスとして提供することも明らかにしている。こうした新しいテクノロジーを活用し、新たなビジネスモデルを生み出していくのが3つ目のイノベーションだ。記録やアクセスが保護され、透明性を確保しているブロックチェーンという新しいテクノロジーの活用は、金融はもちろんのことだが、それ以外の分野でも応用できると期待されている。英国の振興企業、EverledgerはIBMのブロックチェーンサービスを用いてダイヤモンドを鉱山から消費者まで追跡し、ダイヤモンド認定書や取引履歴を記録するビジネスネットワークを構築している。これにより、宝石にかけられる保険金の不正請求を防止するソリューションにもなるという。

 「もはやムーアの法則に妥当性はない。テクノロジー、コラボレーション、そしてビジネスモデルのイノベーションによって未来をアークテクトしよう」とロザミリア氏は話す。

(取材協力:日本アイ・ビー・エム)

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