NECのAI技術とGEの産業向けプラットフォーム「PREDIX」を組み合わせたソリューションを世界展開する。
NECと米General ElectricのIT・ソフトウェア事業部門GE Digitalは10月26日、IoT分野で包括的な提携を結ぶと発表した。GEの産業向けプラットフォームのクラウドサービス「PREDIX」とNECの人工知能(AI)を組み合わせたサービスの開発や、PREDIXを利用した基幹業務システムの構築サービスなどを展開するという。
両社は、まず下記の6つの施策に共同で取り組み、一部については2017年からソリューションサービスの提供などを順次実施する。
NECは、100カ国以上にわたる製品のサプライチェーンマネジメントにPREDIXのサービスを採用し、業務プロセスの標準化などによるコスト削減を図る。また、同社が世界中でリプレースを進める「SAP HANA」などを利用した基幹システムとPREDIXも連携させ、経営管理から製品管理までの全体をカバーするプラットフォームを確立した考え。PREDIXの自社導入によるコスト削減効果は少なくとも年間数十億円規模になるといい、同社はこのノウハウを国内企業にも提供する。
また、PREDIXを通じた「NEC the WISE」のサービス提供では特に映像認識技術に注目しているといい、従来のICタグなどを利用した製品情報の管理に映像認識とクラウドサービスを取り入れることで、より効率的で情報活用がしやすい仕組みが実現されるという。
サイバーセキュリティソリューションは、GEが強みとする産業制御システムの管理技術とNECのITセキュリティ技術を組み合わせて実現するという。GEは2014年に産業システムセキュリティベンダーのWurldtechを買収してGE Digitalに統合。NECは、サイバー脅威分析やセキュリティ監視サービスを政府や国内企業などに提供している。IoTや産業制御システムではマルウェア感染などによるシステム停止などの深刻な問題が顕在化しており、両社では特にセキュリティソリューションの開発・提供を急ぐとしている。
同日の記者会見で両社は、包括提携における“蜜月”ぶりをアピール。NEC 執行役員の榎本亮氏は、NEC創設者の岩垂邦彦氏がGEの前身一つとなるエジソン・マシン・ワークスに留学していた1880年代に両社の関係がさかのぼるとし、今回の提携はGEのジェフ・イメルトCEOとNECの新野隆社長のトップ会談で実現したと紹介した。
GE Digitalのチャネル・アライアンス・ビジネス開発ベンチャー担当グローバル責任者を務めるデンジル・サミュエルズ氏は、GEが進めてきた産業インターネット分野の戦略について、「産業ビジネスでは1%の生産性の向上が1兆ドルの収益になる。デジタル技術を取り込むことでGE自体を最適化し、そのノウハウを顧客企業に、そして、世界に展開することを通じて、顧客の価値創造を貢献するのがGEの狙いだ」と説明した。
榎本氏によれば、NECは日本の人口減少と世界の都市人口の増大によってもたらされる社会の安全保障やインフラ維持、エネルギー需要の問題に注目しているといい、AI技術を用いた予兆検知や自動予測などのソリューションをさまざまな社会インフラに展開している。
両氏は、GEのPREDIXとNECのデータ処理技術が融合することで、産業分野が抱える生産性の向上やコスト削減などの効率化、セキュリティリスクといった問題の解決に貢献できると強調した。
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