世界の有力なITベンダーがこぞってAI技術の研究開発と事業化に注力する中、独立系クラウドサービス専業最大手のSalesforce.comが満を持してAI戦略を打ち出した。果たして競合他社と比べてどこが違うのか。
「誰かのために生きてこそ、人生には価値がある」――。米Salesforce.comのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は2016年10月、アルベルト・アインシュタイン博士のこの言葉を引用しながら、博士の名にちなんだAI(人工知能)プラットフォーム「Salesforce Einstein」を自社イベントで初披露した。その内容について、日本法人のセールスフォース・ドットコムが11月16日、日本で初めて記者向けに説明会を開いた。
AI技術の研究開発と事業化に向けては、GoogleやFacebook、IBM、Microsoftなど世界の有力なITベンダーがしのぎを削っている。そんな中、独立系クラウドサービス専業最大手のSalesforceが満を持して打ち出したAI戦略は、競合他社と比べてどこが違うのか。
まずはEinsteinのコンセプトについて、セールスフォース・ドットコムの御代茂樹マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアディレクターが次のように説明した。
「AIは既に私たちの周りで活用されている。例えば、自然言語処理を施したAppleデバイスのSiri、機械学習によるAmazon.comのレコメンデーション機能など。だが、そうしたAIを企業が活用しようとすると、実はさまざまな課題が浮かび上がってくる。まず膨大なデータを準備しなければならず、それを処理するためのセキュアなインフラや、AIを活用して解析を行うデータサイエンティストのスキルが必要になる。また、その前提として、こうしたことを行う目的を明確にしておかなければならない。Einsteinはこんな企業の課題に対応し、全てのユーザーがAIをビジネスに有効活用できるようにしたいと考えて開発された」
では、Einsteinは、御代氏が挙げた企業の課題にどう対応しているのか。それは取りも直さず、Einsteinが「SalesforceユーザーのためのAIプラットフォーム」であることがポイントになる。AIは、Salesforceが提供するさまざまなサービスに組み込まれた形で提供されるため、同氏が挙げた「膨大なデータを準備」「セキュアなインフラ」「使用目的の明確化」といった課題は必然的に解消されるわけだ。
さらに、「データサイエンティストのスキル」を提供するために、Salesforceは2015年から10社のAI企業を買収し、技術とともに170人を超えるデータサイエンティストをかき集めてきた。この専門家たちがEinsteinを通じてユーザーにデータサイエンティストとしてのスキルを提供する格好だ。
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