デジタル変革の拡大、クラサバの後退――2017年のIT市場10大予測(2/2 ページ)

» 2016年12月13日 17時49分 公開
[ITmedia]
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6.DXの普及が、エンタープライズインフラストラクチャの選定基準とITサプライヤーの競合関係に変化をもたらす

 エンタープライズインフラストラクチャの支出が大きく変わるとともに、ユーザー企業の選定基準に変化が起き始める。選定基準の変化とは、エンタープライズインフラストラクチャを経済性、迅速性、拡張性、導入容易性などに基づいて選定するだけではなく、ビジネス変革や企業の新しい価値創造の活動にどれだけ貢献できるかも考慮されることを意味する。Hewlett Packard Enterprise(HPE)とデルテクノロジーズという巨大ブランドのITサプライヤー2社がオールフラッシュアレイやハイパーコンバージドシステムへの取り組みで国産ITサプライヤーよりも先行しており、2017年は成長性が高いインフラ市場においてITサプライヤー間の競合関係が変化する可能性がある。

7.認知システム/AIの事例がプロフェッショナルサービス、セキュリティ/リスク管理分野で多数登場する

 2016年は認知システム/AIが実証実験やプロトタイプシステムによって、実ビジネスの現場でどのように利用できるかが検証され、効果の可視化が行われてきた。2017年は実ビジネスへの適用が始まり、有償かつ効果が可視化されたシステムへの移行期になる。

8.産業特化型クラウドがDXエコノミーのコア技術として成長を始める

 産業特化型クラウドは「効率化/コンプライアンス/ガバナンス」を目的とした第1世代からDXを実現する第2世代へ発展。一企業のDXがAPI経由で異業種のDXとつながり、より大きな経済効果を生むDXエコノミーを形成する。DXエコノミーは特定企業/産業内の事象ではなく、全ての経済活動に大きな影響を与えるようになる。

9.AR/VR、ロボティクス、3DプリンティングなどのIA技術が製造業の変革とグローバル競争力の強化に貢献する

 IDCは、DXエコノミー普及の鍵となるIoT、AR/VR、ロボティクス、3Dプリンティングなどを「イノベーションアクセラレーター」(IA)と呼称。国内製造業は以前からIAを積極的に取り入れてきたが、取り組みは個別の技術導入の段階に留まっており、今後DXの一環としてIAの活用を積極的に行うことによって、国内製造業全体の根本的な変革が可能になる。

10.DXが企業の全社的課題として認識され、IT人材とDX推進組織の再定義が進む

 多くの企業でDXが全社的あるいは経営的な課題として認識され、推進するリーダーとして「CDO」(Chief Digital Officer)を設置したり、従来のIT部門とは異なる「第二IT部門」とでも呼ぶ組織を設立する企業が出てきた。こうした中、「IT人材」の課題がクローズアップされ、既存のIT部門人材にビジネス能力の教育を行ったり、事業部門へのジョブローテーションを行ったりしている。「第二IT部門」では既存IT部門の人材ではない事業部門の人材を中心に組織されているケースも多く見られる。このような状況の中、企業において「IT人材」とは何かを再定義する動きが強まる。極論すると、企業内全ての従業員をIT人材化しなければ、企業競争力を強化するようなDXは実現できない。


 IDC Japanは、2016年に第3のプラットフォームの重要性がITサプライヤーの間で常識になり、新たな成長のけん引役を求めて認知システム/AIやIoTに関心が集まったとし、DXの概念がITサプライヤーの間に浸透したと解説。2017年はDXエコノミー萌芽の年になり、ITサプライヤーはエコシステムの拡大を図ることが最優先事項になると指摘する。

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