責任者不在のプロジェクトにならないためにーーDMP運用の責任は誰が負うべき?DMP成功まで、あと1センチ(6)(3/3 ページ)

» 2017年01月20日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]
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今こそ、システムが分かるマーケターが必要だ

 役割とは「この範囲の仕事は任せたよ」という責任および、権限範囲のようなものですが、その人(や企業)ができる範囲と、求められる仕事のギャップが大きいことは決して珍しい話ではありません。特にDMPにおいては、一流のマーケターでありながら、一流のエンジニアであることが求められる機会が多いようで、各社苦戦しているようです。

 そうでなくても、広告代理店を含むマーケターの守備範囲は、ここ数年の間に広くなっています。「広告」はもちろん、オンラインとオフラインをまたぐ顧客体験(UX)のデザインまで含めた、幅広い意味での「マーケティング」を実践し、かつ成果を上げなければならないようになってきています。

 リアル店舗に来店した顧客のECにおける購買履歴を販売員が確認できたり、ECとリアル店舗の在庫を一元管理して、廃棄率削減や稼働率向上を実現したり――。こういったドラッカーが定義するところの「販売を不要にするためのマーケティング」にITシステムは欠かせなくなっています。

 デジタルマーケティングは今や「インターネット広告」を指すものではなく、「インターネットを使ったマーケティングの全て」を指すようになっています。プログラムは書けなくても、どうやってシステムが動いているか、何となくでも理解できることが当たり前になっているのです。

 ですから、私としてはマーケターの方々がシステムを理解したほうが、プロジェクトはスムーズに進むと考えています。既に総合広告代理店では、データソリューション部門を立ち上げて活動を始めていますが、その輪はもっと広がっていいと思いますし、人に対する投資がもっとあっていいと感じています。現場担当者が、個人の努力だけで何とか頑張る時代は終わりつつあるのです。

 その逆もしかりで、SIerやユーザー企業のIT部門など、ITを扱う人々がマーケティングを知れば、アウトプットはさらに良くなるでしょう。ITの現場と業務の現場、両者の間に立ち、両者をつなぐことができる人材の価値は急速に高まっています。

 複数の関係者が混じるプロジェクト運営のコツは「相手が知っている言葉で話す」ことです。マーケターがITを理解できる、そしてIT部門がマーケティングを語れるようになる時代に、DMPはさらに進化を遂げるはずです。

著者プロフィール:松本健太郎

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株式会社ロックオン開発部エンジニア 兼任 マーケティングメトリックス研究所所長。

セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。

本業はデジタルマーケティングと人工知能を交差させて、マーケティングロボットを現場で運用すること。

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