そして、Veritasは2月23日、Microsoftとクラウドでのデータ管理に関するグローバルな戦略的パートナーシップを結んだと発表した。Veritasの日本法人であるベリタステクノロジーズによると、Microsoft AzureとVeritasのデータ保護ソリューションによるハイブリッドクラウド環境を構築できるようにするとともに、Veritasの情報管理サービス「Veritas Enterprise Vault. Cloud」をAzure上で運用できるようにするとしている。(図2参照)
つまりは、Veritasの製品やサービスのクラウド利用に向けたバックエンド環境としてAzureを採用したというのが、同社の新たなメッセージである。
実は、この3社のクラウド事業への取り組みには共通点がある。いずれもMicrosoftと戦略的パートナーシップを結び、自社のクラウド展開のIaaSとしてAzureを適用していることだ。CitrixとVeritasはそれぞれが発表した通りだが、Adobeも2016年9月にMicrosoftとの戦略的提携について、両社CEOが並んで発表会見を行った。
老舗ソフトベンダーの3社がクラウド事業においてMicrosoftと連携するのは、IaaSとしてAzureを高く評価しているとともに、同じソフトベンダーとして長年共存してきたという意識が働いているようにも見て取れる。さらに、3社にとってはOffice 365などMicrosoftの強力なSaaSとも連携しやすくなるというメリットがある。
とはいえ、最初からSaaSモデルでアプリケーションを提供する新興ソフトベンダーは、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、IBMのIaaSを利用しているケースも多い。また、最近では有力なSaaSベンダーがIaaSを乗り換える動きも出てきている。IaaSベンダーにとっては、有力なSaaSベンダーをどれだけ“顧客”にできるかが競争力の決め手にもなる。
こうした動きを大きな視点で捉えると、これまでハードウェアとソフトウェアに分かれていたIT産業の構造が、クラウドサービスの進展とともに変化していく様子がうかがえる。もちろん、オンプレミスを含むプライベートクラウドが将来においても一定の割合を占めるとみられていることから、ユーザー企業が購入するハードウェアの需要は存続するだろうが、それもサービスとしての提供形態に変わっていくものとみられる。
今回の老舗ベンダー3社の動きは、長年続いていたソフトウェアの提供形態が変わっていくことを示している。それは、ハードウェアの今後のありようも含め、IT産業構造そのものが変化していくことの一端を表しているのではないか。その変化の波に乗り遅れまいと、必死に戦う老舗の姿を見てそう感じさせられた。
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