企業向けクラウドへ本格攻勢、Googleの強みと課題とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年04月03日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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強みはAI技術、課題はパートナーエコシステムづくり

 山本氏はGCPについて、「これまで3年間に294億ドル(約3兆円)の設備投資を行い、世界中に張り巡らせたネットワークやデータセンター群、キャッシュサーバなどを増強してきた。このインフラを1つの巨大なコンピュータとして柔軟に利用していただこうというのが基本的な設計思想だ。これによって、GCPは現在、世界で10億人のユーザーに日々利用していただいている」と語った。

 図2がいわゆる「Google Network」の現状である。また、「リージョン」と呼ばれるデータセンター群はこれまで14カ所だったが、今回の発表で新たに3カ所が追加された。同氏によると、GCPへの設備投資は今後も引き続き注力していくという。

Photo 図2 Google Network

 さらに、山本氏はGCPについて、企業ユーザーの用途が3つに分類されると話す。1つ目は「インフラとセキュリティ」でIT担当者が対象、2つ目は「アプリケーション開発」でまさしくアプリケーション開発者が対象、3つ目は「データ分析と機械学習」でマーケティング担当者やデータサイエンティストが対象、といった具合だ。「従って、私たちとしてもこの3つの領域にGCPをさらに売り込んでいきたい」と語った。

 この話で注目されるのは、GCPがインフラを指すIaaSだけでなく、PaaSの機能も兼ね備えていることだ。考えてみると、競合のAWSサービスもMicrosoft Azureも今やIaaSとPaaSの機能を兼ね備えたクラウドプラットフォームになりつつある。そうなると、Googleが得意とするデータ分析と機械学習の技術が、競合との差別化ポイントとして浮かび上がってくる。

 Googleはかねて「AIファースト」を掲げており、これまで検索エンジンで培ってきたAI(人工知能)技術は高く評価されている。それだけに、今後クラウドプラットフォームとしてデータ分析や機械学習における技術力へのユーザーニーズが高まれば、GCPは選択肢として大きく浮上してくる可能性がある。実際、山本氏が先に語った「エンタープライズクラスの企業への広がり」も、この点が追い風になっているという。同社がこの強みを今後大きく生かせるかどうか、注目されるところだ。

 一方、GCPを展開していくうえでGoogleの課題となりそうなのは、パートナーエコシステムづくりだと筆者は見ている。先述したように、パートナーとの協業は着実に広がっており、とりわけSAPやAccentureとの提携はインパクトがあるだろうが、それでも競合するAWSやMicrosoftのパートナーエコシステムづくりへの注力ぶりに比べると、まだまだ迫力不足は否めない。

 山本氏によると、「企業向けビジネスにおいてパートナーシップが非常に重要なことは、私たちも認識している。NEXTイベントでもそのメッセージを強く打ち出しており、今後、日本でも有力なパートナーと積極的に手を組んできたいと考えている」とのことだ。

 最近、システムインテグレーターなどから「Google Cloudをどう見ているか」と聞かれることが増えた。それだけ注目度が高まっているのは確かだ。強みを大いに生かし、課題をどう乗り越えるか。Googleの今後のアクションに注目しておきたい。

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