なぜ今、“AIファースト”なのか Google、AIクラウドに本腰Weekly Memo(1/2 ページ)

Googleが企業向けクラウドサービスに一段と注力し始めた。検索エンジンで培ってきたAI技術を注入したのがミソだ。このAIクラウドで、AWSやAzureといった競合を打ち負かすことができるのか。

» 2016年06月20日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]

企業向け事業のトップが語るクラウドサービスの現状

 米Googleの日本法人であるグーグルが先頃、都内ホテルでプライベートイベント「Google Atmosphere Tokyo 2016」を開催したのを機に、米国本社で企業向け事業を統括する上級副社長のダイアン・グリーン氏およびエンジニアリング担当副社長のプラバッカー・ラガバン氏が来日し、記者会見を行った。

 IT業界で企業向け事業に25年間携わってきたグリーン氏は、米VMwareの共同創業者として10年間CEOを務めた経歴を持ち、Googleが企業向け事業を強化するために招き入れて2015年11月に現職に就任した人物である。会見の冒頭でサラリと語った「Googleと仕事ができて大変うれしく思う」との一言に、筆者は「プライド高きトップマネジメント」のプロ意識を強く感じた。

Photo 米Googleで企業向け事業を統括する上級副社長のダイアン・グリーン氏

 ここでは、そんなグリーン氏と技術責任者であるラガバン氏の会見から、筆者が印象深く感じた発言を4つピックップし、その意味や背景をひもとくことによって、Googleの企業向けクラウドサービス事業の核心に迫ってみたい。

 まず1つ目は、「新しい技術を活用しないのは、企業にとってリスクとなる」という現状認識である。グリーン氏はその意味について、「今やインターネット関連技術によって誰もが情報を受発信できるようになった。そうした技術は企業にも大きな影響を与えており、むしろどう活用するかが問われるようになってきている」と説明。積極的に取り込む姿勢で臨まなければ、企業としてデジタル社会に取り残されるリスクが増大するとの認識を示した。

 2つ目は、「Google Cloud Platformは競合他社のIaaS型クラウドサービスと比べてしっかりと差別化を図っている」との発言である。グリーン氏はその根拠について、「サービス全体として常に競争力のある料金設定を行っているとともに、IaaSだけでなくPaaSとしてもGoogleが保持している技術やリソースを提供している」ことを挙げた。

 もっともGoogle Cloud PlatformがIaaSだけでなくPaaSの機能を装備したのは数年前のことだが、グリーン氏が差別化の要因として強調したのは、ここにきてPaaSにおけるデータ解析機能を一層強化し、さらには機械学習をはじめとしたAI技術を注入した点である。このAIについては、Googleは強い自負とこだわりがあるようだ。それを象徴する発言を次に挙げよう。

なぜGoogleは“AIファースト”を掲げるのか

 3つ目は、「Googleは“AIファースト”を強力に押し進めている」というラガバン氏の発言である。「AIファースト」という言葉は、GoogleのCEOであるスンダー・ピチャイ氏が4月に「モバイルファーストからAIファーストへ」と明言したことで、今や同社の事業姿勢を示すスローガンになっているようだ(図1)。

Photo 図1:Google CEOのスンダー・ピチャイ氏が掲げた「モバイルファーストからAIファーストへ」

 なぜ、AIファーストなのか。ラガバン氏は「AIは新たなユーザーインタフェース(UI)になる。すなわち新たなエクスペリエンスとして、全ての製品やサービスに埋め込まれていくものになるからだ」と説明した。

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