なぜ今、“AIファースト”なのか Google、AIクラウドに本腰Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年06月20日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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 さらに、AIが新たなUIになる理由について同氏は、「大量でさまざまな種類の情報が日々生み出されている中で、人間がいかに有効な情報を的確かつスピーディに捉えて意思決定していくか。その手助けをしてくれる技術としてAIが期待されているからだ」と語った。Googleはそうした考え方のもとに、さまざまなサービスにAI技術を適用しているという。

 そして4つ目は、「企業へのクラウドサービスの普及は、まだ初期の段階だ」というグリーン氏の見解である。この発言は、会見の質疑応答で筆者が「クラウドサービスにおいて、GoogleはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftに後れを取っているようだが、どう巻き返すか」と聞いたときの回答である。グリーン氏は「クラウドへ移行した企業の割合はまだ1割足らず。本格的に普及するのはまさしくこれからだ」とも語った。

Photo 記者会見で質疑応答に臨むグリーン氏と米Googleエンジニアリング担当副社長のプラバッカー・ラガバン氏

 同氏はまた、「Googleは16年前からクラウドを運用し、順次サービスを提供してきており、その豊富な内容やユーザー数の推移から見ても、私どもがAWSやMicrosoftに後れを取っているとは思っていない」との認識を示し、「Googleのクラウドサービスはどんどん強化しており、ここにきて非常に弾みがついている」と強調した。

 さらに同氏は、「Googleは、クラウドによってITの仕組みをどうすれば柔軟に拡張でき、自動化できるかを追求してきた。そうしたクラウドならではの視点は、サービスでも変わらない。従って、単にワークロードをホスティングするだけのレベルとは異なり、クラウドの本当の価値を提供できると自負している。企業ITのクラウドへの移行は何年もかけて進んでいく。そうした企業の取り組みをGoogleはしっかりと支援していきたい」と語った。この姿勢が、Googleの企業向けクラウドサービス事業の核心であり、勝算の根拠とお見受けした。

 「AIファースト」を掲げたCEOのピチャイ氏は2月、「2016年はクラウドサービスに積極的に投資する」と宣言し、AWSやMicrosoftに真っ向から挑む姿勢を明らかにした。AI技術についてはAWSもMicrosoftも注力しているが、3月に行われた囲碁対局で世界最強レベルの棋士を下したAIプログラム「AlphaGo」によって技術力の高さを知らしめたGoogleの“AIクラウド”が脅威の存在になるのは間違いない。3社による高度な技術競争から素晴らしいエクスペリエンスが生まれるならば、ユーザーとしては大歓迎である。

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