AWSを使うとベンダーロックインされるのか 会見で聞いてみたWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年04月10日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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ベンダーロックインはユーザーの選択肢

 今野氏は最近の市場の動きとして、企業における既存のITシステムがクラウドに移行する「ITトランスフォーメーション」と、最新のデジタル技術を活用して新しい製品・サービスやビジネスモデルを創出する「デジタルトランスフォーメーション」の2つの流れがあるとし、「AWSのサービスは両方のユーザーニーズに応え、ビジネスの競争力を高める“ビジネスプラットフォーム”としてお役に立てるようにしたい」と強調した。(図2)

Photo 図2 AWSがとらえた市場の動き

 また、パートナー戦略も上記の2つの流れに対応。ITトランスフォーメーションでは、エンタープライズシステムをクラウドへ移行する手だてなどを支援。デジタルトランスフォーメーションでは、AI(人工知能)関連サービスを提供するパートナーの後押しやサーバレスアーキテクチャの普及拡大を図っていく構えだ。

 さて、ベンダーロックインの懸念についてはどうか。会見の質疑応答で聞いたところ、今野氏は次のように答えた。

 「AWSはユーザーニーズに応じて最新のサービスを提供することに注力しており、それがベンダーロックインになるとは考えていない。むしろ、特定のデータベースに縛られていることの方がベンダーロックインではないか。そんな状態から解き放たれたいと考えてAWSに移行するユーザーも少なくない。しかもAWSのサービスはさまざまな利用形態を選択でき、変更も柔軟に行える。結果的に、システムの構築や運用を特定のベンダーに依存することがベンダーロックインならば、それはオンプレミス時代から変わらないありようではないか。もしベンダーロックインがもたらすリスクに対する懸念があるとすれば、そこはぜひともAWSを信用していただきたい」

 今野氏の耳にもベンダーロックインの話は入っているのだろう。回答の声のトーンが上がったのが印象的だった。

 また、今回の会見には、2016年12月にAWSのプレミアコンサルティングパートナーになったNECとNTTデータの担当者も出席していたので、この件についての見解を聞いてみた。

 「クラウドにもさまざまな利用形態があり、ユーザーニーズに応じたシステムを提供する立場としては、AWSのサービスも選択肢の1つとなる。その意味でベンダーロックインになるとは考えていない」(NECの川井俊弥SI・サービス市場開発本部エグゼクティブエキスパート)

 「当社ではさまざまなクラウドサービスを手掛けているが、中でもAWSは今ダントツの需要がある。確かにベンダーロックインを懸念する声は耳にするが、だからといって、それが理由でAWSを採用しないという話は聞かない」(NTTデータの濱口雅史ビジネスソリューション事業本部データセンタ&クラウドサービス事業部長)

Photo 左から、NECの川井氏、AWSジャパンの今野氏、NTTデータの濱口氏

 最後に筆者の見解を述べておくと、ベンダーロックインもユーザーの選択肢だと考える。要はクラウドにせよオンプレミスにせよ、何のためにITを使うかが最も重要であり、ベンダーロックインによるリスクはそれとのトレードオフといえる。いずれにしてもこうした論議が出てくるところに、AWSの存在がますます大きくなってきたことを感じる。ただ、この問題はユーザーメリットの観点から、今後も注意深く見ておく必要があるだろう。

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