2017年のエンタープライズIT業界、気になる3つの動きWeekly Memo(1/2 ページ)

2017年のエンタープライズIT業界はどうなるか。注目すべき動きについて、ベンダー各社トップの年頭所感を交えながら、筆者なりに予測してみたい。

» 2017年01月10日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]

 新たな技術やトレンドが次々と登場し、これまでにない変革の時を迎えているエンタープライズIT業界。2017年は、どんな動きが起こるのだろうか――。ベンダー各社トップの年頭所感を交えながら、筆者なりに予測してみたい。

[予測1]企業の基幹系システムのクラウド化が本格的に進み出す

 これまで企業システムのクラウド化は、どちらかといえば情報系や事業のスタートアップ時の新しいシステムに適用されるケースが多かったが、2017年からはいよいよ基幹系の移行が本格的に進み出すだろう。

 そこで注目されるのは、データベースやERPといった基幹系システムのソフトウェアで高いシェアを持つOracleとSAPのユーザーの動向だ。両社ともここにきて自社ソフトのクラウド利用環境の整備に注力しているが、ユーザーにとってクラウド化は基幹系システムの抜本的な見直しを図る絶好の機会である。それだけに両社は、基幹系システムのクラウド化を先導することで、引き続き確固たる顧客ベースを維持・拡大したい考えだ。下記の発言には、そんな両社の思いが表れている。

 「企業や社会の重要な基幹ITを支える領域でのクラウド活用はこれからが本番。従来と比較し既存システムの運用管理コストを大幅に削減できるとともに、どこにいても必要な時に必要なだけ、迅速かつ俊敏に最新のITを構築、活用することができる。最小のリソースで最大のビジネス効果をもたらすためには、既存の仕組みをクラウドへ移行することが規模を問わず必要不可欠になってきた」(日本オラクルの杉原博茂社長)

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 「(ERPの最新版である)SAP S/4HANAのクラウド版も出そろい、SAPは基幹システムを含めたエンド・ツー・エンドのクラウドを、あらゆる業界に最適化した形で提供できる稀有な企業となった。守りのITをシンプルにするからこそ、攻めのITに取り組む余力を創り出せる。“企業のフルクラウド化”によって、守りと攻めのITのそれぞれに適切な変革を起こすことを目指し、真剣に取り組んでいく」(SAPジャパンの福田譲社長)

 上記は、両氏が2017年の年頭所感で述べているものである。両社のユーザーがクラウド化に進めば、基幹系システムの利用形態が新たな段階に入ることが、このコメントからも見て取れる。

[予測2]AIがUXの決め手になる

 今まさに一大ブームとなっているAI(人工知能)だが、エンタープライズITの観点から見ると、さまざまな業務アプリケーションを“賢く”する技術として活用され、2017年はそれがUX(ユーザーエクスペリエンス)の決め手として注目されるようになるだろう。

 従って、エンタープライズソフトウェアベンダーはUXを向上させるために、AIをどう活用するかが問われるようになる。こうした取り組みに向けては、日本マイクロソフトの平野拓也社長とセールスフォース・ドットコムの小出伸一社長が、年頭所感で次のように述べている。

 「マイクロソフトではクラウドのパワーをフル活用し、AIをあらゆる人々と組織に対して活用できる環境の実現を目指している。誰もがアクセスしやすく価値があるものにし、最終的には社会の最も困難な課題を解決するための新しい方法の実現に向けて“AIの民主化”を目標に取り組んでいる」(平野氏)

 「営業、サービス、マーケティングなどの現場で最先端のAI機能を活用可能で業務効率を高めることができるSalesforce Einsteinを組み込み、お客さまの成功を支えるプラットフォームの提供に注力していきたい」(小出氏)

 AIをさまざまな分野に適用しようという取り組みが大きく広がっているが、エンタープライズIT分野では業務アプリケーションにおいてその賢さを身近に実感できるようになるはずだ。2017年はそのスタートの年になるだろう。

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