デジタルの活用は業務における個人の生産性を上げつつある。だが、それが企業全体としての生産性向上につながっているのかどうか。Boxのアーロン・レヴィCEOの見解と施策から考察する。
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「デジタル技術を活用することによって、業務における個人の生産性はだいぶ上がってきた。しかし、それが企業や組織全体としての生産性向上に、本当につながっているか。今がその転換点ではないか」
米Box共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ氏は、同社の日本法人Box Japanが2024年6月25日に都内ホテルで開催した年次イベント「BoxWorks Tokyo 2024」の基調講演で、こう切り出した。シンプルな問いかけだが、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の本質を捉えた話だ。
同氏のスピーチの結論は、Boxがこの問題を解決するというものだが、そのプロセスにおいて「企業や組織全体としての生産性向上をどう図るか」という根本的なテーマについて考えさせられる話があったので、今回はその内容を基に考察したい。
レヴィ氏は「AIが私たちの働き方を一変させる」と言い、個人であれ企業や組織であれ、業務の生産性向上にAIが相当なインパクトをもたらすことを強調し、次のように続けた。
「AIは、これまで人間のタスクのごく一部を実行することしかできなかった。それが今、生成AIが使われるようになって、人間の一般的なタスクを全て実行できるようになってきた。そしてこれからは、一般的なタスクを大規模に実行できるようになるだろう」(図1)
同氏はこの変化をAIが何者かという観点で言い換える形で、これまではテキストなどを生成する「AIモデル」、今は質問に答える「AIアシスタント」、これからは企業や組織内で作業を自動で実行する「AIエージェント」と呼んだ。この変化からも、AIのインパクトが個人から企業や組織にシフトしていく様子がうかがえる。
では、個人の生産性向上を企業や組織の生産性につなげるためにはどうすればよいのか。同氏は個人の生産性を高める要素として、コードの記述、電子メールやドキュメントの作成、プレゼンテーションの作成、ドキュメントのレビュー、専門家による分析を挙げた。それを企業や組織の生産性を高める要素である、製品開発の迅速化や顧客を即座にサポートする、パーソナライズされたマーケティング、サプライチェーンにおけるDXの進展、ビジネスリスクの低減につなげるためにはどうすればよいかというわけだ(図2)。
「ここで目を向けるべきは、重要なコンテンツを扱う業務の在り方だ」
こう話したレヴィ氏は、その意味について次のように説明した。
「企業や組織において業務の中心にあるのはコンテンツだ。決算レポートやさまざまな契約書、顧客へのマーケティング材料、新製品のリリース、従業員のトレーニングといったコンテンツは企業や組織にとっていわば“血液”だ。しかも企業や組織において基幹データといわれる財務や顧客などに関する構造化データの割合は全体の1割にすぎず、9割が非構造化データのコンテンツだ。この9割のコンテンツをAIによってどのように活用できるかが、企業や組織においての生産性向上に大きなインパクトをもたらすことになる」
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