堺屋太一氏の書籍『組織の盛衰』では、イノベーションのジレンマを「環境への過剰適応」「成功体験への埋没」「機能体の共同体化」に分類しています。
日本家電メーカーのスマートテレビやスマートフォンへのアプローチは、モノ支配論理からサービス支配論理への転換を理解しない、日本の伝統的モノづくり主義への固執という「環境への過剰適応」が“スマート敗戦”の理由でした。
一方、HomePodでは、Apple自らが作り出した新しい競争環境(サービス支配論理)への適応が一歩後退し、「Apple製品なら高い値段でも売れるはずだ」というiPhoneの「成功体験への埋没」による過信が、イノベーションのジレンマをもたらしているのではないでしょうか。
ストリーミングサービスへの対応が遅れている「Apple TV」は、既に、米国では売上が落ちており、「Roku」「Fire TV」「Chromecast」の方が売れています。値段が高い割りにサービスで劣っているという点では、HomePodと同じです。
以下は、Apple TVの敗北を裏付ける資料です。
コネクテッドTVのユーザー数推移。2015-2020(「Select US Connected TV Users, by Device, 2015-2020 (% of total connected TV users)」eMarketer Chartより)「Apple Watch」というウェアラブルでは一定の創造力を発揮するも、いまだに市場のキャズムを超えられないようでは、昔の面影はありません。
果たして、Appleは、イノベーションのジレンマを克服できるでしょうか? それともソニーのような日本メーカーと同じ道を進むことになるのでしょうか?
総合商社のIT子会社にてIT技術者を約20年経験。ロンドン勤務の後、大手総合研究所勤務を経て現在は日本ナレッジマネジメント学会専務理事、ビートコミュニケーション顧問。得意分野は自我流の記号論やメディア論、社会心理学、進化系の人類学などによるネットコミュニティーの分析です。
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