Nスペで注目の国産AI「KIBIT」、導入するにはいくらかかる?週末エンプラこぼれ話

狭い会場に多くの人が詰めかけた「AI・人工知能 EXPO」。中でも混雑していたのが、人工知能「KIBIT」を展開するFRONTEOのブースだった。NHKスペシャルで取り上げられたことで、問い合わせが増えているという。

» 2017年07月07日 07時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 6月28日〜30日に東京ビッグサイトで開催された「第1回 AI・人工知能 EXPO」。3日間での来場者数は4万人を超え、早くも2018年4月に第2回が開催されることも決まった。規模も3倍に増えるとのことで、人工知能に対する関心の高さを表しているといえるだろう。

 今回、展示会場の中でも、ひときわ混み合っていたのが、人工知能「KIBIT」を展開するFRONTEOのブースだ。KIBITを搭載したロボット「Kibiro」にも人だかりができていたが、2017年6月下旬に放送された「NHKスペシャル」で取り上げられたこともあり、「KIBIT Knowledge Probe」の説明を聞く来場者が非常に多かった印象だ。

photo KIBIT Knowledge Probeの画面

 KIBIT Knowledge Probeは、自然言語解析に対応したテキストデータの分析ツール。ユーザー自らが分析軸を設定し、教師データと非教師データを選択すると、各データにスコアが付き、教師データに近い傾向のテキストデータがピックアップされる仕組みだ。

 NHKスペシャルでは、医療機関向け人材派遣を行っているソラストが面談用アンケートの文章を分析、離職の予兆を察知するために導入していた。ブースでは、ワインの購入者から届いた感想や意見のうち、優先して対応すべき要望をピックアップするというデモを紹介していたが、NHKスペシャルの影響もあり、「従業員の離職防止にどう使えるか」を聞く来場者が多かったという。

photo KIBIT Knowledge Probeの仕組み

KIBITが金融機関に人気の理由

 テキストマイニングツールの中でも、KIBIT Knowledge Probeの特徴は、教師データが少なくても高精度なアルゴリズムの作成が可能なことだ。データ量にもよるが、200〜300程度のサンプルならば、5〜10個程度の教師データを選べばOK。反対に手本にならない(逆の傾向を持つ)データについては「全体の10%くらいを選択する必要がある」(FRONTEO)とのことだ。

 一度アルゴリズムを決めてしまえば、そこから追加でデータを入力しても、すぐにスコアが表示される。学習や推論にかかるコンピューティングリソースが少なくて良いため、一般的なノートPCにソフトウェアをインストールするだけで動かすことができる。

photo ブースで行われていたデモでは150個のデータに対して5個程度の教師データを選ぶことでアルゴリズムを生成していた

 教師データを読み込ませる時間がほぼないため、1回の分析にかかる時間は3〜5分程度で終わる。筆者も実際に体験してみたが、分析軸を自分の感覚(味についての評価、発送に関する話など)で設定できるのは、非常に使いやすいと感じた。教師データを選びすぎても良い結果が出ないこともあるため、システム構築時に実データを基にして使い方のアドバイスを行うそうだ。

 従業員がチェックすべきニュース記事の選定に使っている三菱重工業や、病状悪化の予兆を発見するために使うLITALICOのほかにも、横浜銀行やりそな銀行など、金融機関での導入事例が増えており、引き合いも強いという。

 これについて、FRONTEOの担当者は「オンプレミスでもクラウドでもシステムを構築でき、オンプレミスを選べる点で金融機関からの印象が良い。顧客からの声などのデータを外部に出したくないのではないか」と推測している。データ量などにもよるが、一般的な価格は「システム構築などの初期投資が100万円、月額利用料が50万円から」(FRONTEO)とのこと。

 ディープラーニングなど、人工知能の力だけで高度な自動化を実現する例がある一方で、Knowledge Probeは人間が教師データを選び、スコアに基づいた最終的な判断を人間が行う“半自動”のシステムだ。だが、それゆえにITに詳しくない人でも理解しやすい「お手軽AI」として、業務に浸透する可能性が高いように感じる。

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