「テレワーク・デイ」に「働き方改革」のおいしいところを考える(2/3 ページ)

» 2017年07月25日 07時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

実労働時間の把握が肝要

 労働時間が限られることで、時間あたりの生産性向上が叫ばれているが、何からスタートすればいいのだろうか。

 白河氏は、「みなさんが生産性向上って唱えているけど、業務効率向上とは本来違うものだ。日本の人口はこれから減る一方なので、生産性を上げるしかないが、個々人が頑張るだけではなく、新しいサービスなどを作る必要がある。ところが、今は後者の業務効率向上ばかりが目立っており、会議の見直しや無駄な残業削減、上司や仲間とのコミュニケーションをきちんとやっていれば解決できる内容が多い」と指摘する。

 「働き方改革では、今、富士山の何合目にいるのか進ちょくを把握できない人が多いと感じている。違法な工夫は論外だが、きちんと仕事が終わるにはどうするのかを考えるのが重要で、IT業界は今がチャンスだ。アクション内容を決めたら、それに適した仕組みやツールを導入しないと意味がなく、業務改善効率にはITが貢献できる機会が非常に多い」(白河氏)

 働き方改革のキモは、取り組むことで「ここを変えなければならない」という部分が見えてくることにあると田澤氏は言う。

 「これからの日本は、“ワンオペ稼ぎ”から“チーム稼ぎ”にならないといけない。これまでの人口ボーナス期はみんなが一律に働いていたが、今後の人口オーナス期は多様な働き方で、仕事の量ではなく質が問われ、会社から言われたことをやるのではなく、各人が自立することが求められるようになる。指示待ち社員はテレワークに合わない」(白河氏)

 田澤氏は、以前からテレワークで時間管理は重要なポイントで、時間を意識して働かないといけないと主張している。白河氏は「徐々にではあるが、好きで働いても成果が出なければ、賃金に結びつかなくなってきている。当たり前のことかもしれないが、逆に働き過ぎで倒れてしまっては意味がない。例えば、メールの確認はスマホなどで簡単にできてしまうし、ちょっとしたことで働き過ぎになってしまう。メールが『つながらない権利』など労働時間の上限を決める、上限規制が必要になる。事実、フランスではメールのつながらない権利の法制化を検討中で、日本でもジョンソン・エンド・ジョンソンのように時間を決めてメールを自粛するような導入事例もある。厚生労働省の新しいガイドラインでは、実労働時間を区切るようにして実労働時間の把握義務を推奨している」と解説する。

「働き方改革」の“おいしいところ”とは

 白河氏が興味深い指摘をした。

 「働き方改革を進めるうちに見えてくるものがある。それは、ギスギスとしていた職場が解消されるといった、目に見えない変化だ。Googleは従業員が気持ちよく働けるようにほぼ完全ともいえる環境があるのに、チーム実績にばらつきがあった。調べたところ、安心して働けると感じられるチームは成績がいいことが分かった。小さい声が受け入れられるチームが一番生産性も高く、関係性がよくなる職場が働き方改革でハッピーになるという発表もあった(AIの働き方アドバイスで職場の幸福感と業績が向上――日立が実証実験で効果を確認)」(白河氏)

 白河氏は「今や仕事の量ではなく質が問われている、リレーションシップがこれからは重要になる。目に見えないところがよくなるのは、働き方改革のおいしいところなのではないか」とし、「今後は成果を測れるマネジメントが重要で、働き方改革は実はマネジメント改革が求められているといっても過言ではない。最終的には、評価と報酬を変えていく必要がある」と主張し、田澤氏も「これからマネジメントが大変になる。働き方改革がきっかけで、イノベーションが起き、ビジネスチャンスが増えていくのでは」とまとめた。

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