光なのに夜、通信が超遅い…… そんな場合の対処法半径300メートルのIT(2/2 ページ)

» 2017年11月02日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]
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 IPv4というと思い出すのは「アドレスの枯渇問題」。インターネットの世界は徐々に次の仕組みである「IPv6」に移行しつつあります。家庭からインターネットに出るには「IPv4ではなく、直接IPv6につなぐ」という方法があり、IPv6上でIPoEを使えば、大混雑している部分を尻目に悠々と高速通信ができるのです。

 ただし、IPv6はまだまだ浸透しておらず、このままではほとんどのサーバに接続できません。そのため、IPv4のサーバを見られるように変換する仕組みが提供されています。それが「DS-lite」です。

Photo DS-liteを使ったIPoEの仕組み(IIJサイトより)

 このサービスは、来るべきIPv6時代に向け、これまでのIPv4の世界から一歩進んだ取り組みといえます。将来は全てがIPv6になるはずですから、混雑しているけれど旧来のIPv4を使う部分に投資するのではなく、IPv6部分に投資するというのは、プロバイダーの個性が出ていて面白いと思いました。

 光回線のプロバイダーを変えても、その時点では空いていたとしても、いつ、同じようなことになるかは分かりません。今回のオプションは、やり方を根本的に変えているので、しばらくの間はこの快適さが続くのではないかと思っています。

 なお、IPv6からIPv4の変換方式として「MAP-E」を利用するタイプのプロバイダーもあります。もし、お使いのプロバイダーが混雑していて、夜になると速度が落ちるとお悩みの人は、問い合わせてみるといいでしょう。

理想は“いつのまにか快適に使えるように”なること

 ただ、この方法も万全というわけではありません。あくまで、“今はこの方法を選択する人が少ないから”速いのであって、「IPv6だから速い」というわけではないからです。

 しかし、このようなメリットがあれば、少しづつでもIPv6の浸透は進むでしょう(とはいえ、混雑を回避するために、利用者側がルーターと800円/月のオプション費用を出すことには少々違和感を覚えますが……)。

 いずれ、インターネットに接続する人のほとんどがこの方法を選択した場合、IPv4と同様に混雑し、遅くなるはずです。その頃には多くのサーバがIPv6対応になって、変換の仕組みを取ることなく通信ができることを期待したいと思います。

 既にiOSでは、iOS 9のころから「アプリはIPv6で通信できなければならない」という制限が加わっています。そして日本の携帯電話事業者もIPv6対応を強力に推進しています(参考記事:Apple、iOSアプリを6月1日から「IPv6サポート必須」に)。

 これまでIPv6の浸透が進んでいるという実感はありませんでしたが、自分がこのような形で「いつの間にか」次の世界に行ったことで、ほんの少しだけ変わったような気がします。

 多くの人が使うインフラが次世代に変わるには、「意識することなく使えて」「大きなメリットがある」ことが重要です。いつの間にかIPv6になっていて、快適に使えるというメリットがある。でもIPv6が何かは全く分からない――それが、あるべき姿なのかもしれません。

 次にあるべき姿は、このオプションが標準で使われるようなプロバイダーが増えていくということでしょう。その際、量販店の光ケーブル担当者がには、このメリットとデメリットをきちんと説明してほしいところです。

 キャッシュバックなどのおまけ、値引き、カタログ上の最大速度だけを声高にアピールするより、「乗り換え以外の方法もある」「有償でもこれだけのメリットがある」と誠実に伝えてくれる、“利用者第一”の代理店が増えることを期待したいと思います。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

デジタルの作法 『デジタルの作法』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

筆者より:

2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。

これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。


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