やっぱり、働き方改革は“名ばかり” 評価や効果測定に不満、IT活用もこれから

オラクルの調査で、働き方改革に取り組む企業は80%を超えるものの、労働環境の改善施策が多く、ビジネス成長を意識した生産性向上施策とIT活用に課題があることが分かった。

» 2017年11月02日 18時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 日本オラクルは、国内企業の管理職を対象にした働き方改革とIT活用に関する調査結果を発表した。

 同調査は、従業員100人以上の国内企業で働く部長職以上の管理職412人を対象に10月に実施したもの。働き方改革に取り組んでいる企業は80%を超えているが、残業時間の削減や有給休暇取得の促進といった労働時間の削減施策が多く、ビジネスの成長を意識した生産性向上の取り組みとIT活用については課題があることが明らかになった。

生産性向上を測定する仕組みに課題

 働き方改革の目的は、「生産性向上(48.7%)」「ワークライフバランスの実現(44.9%)」「コンプライアンス順守(41.3%)」が上位を占めた。働き方改革の本来の目的が生産性向上であるという認識は十分にされているとオラクルは分析する。

 次いで多かったのは、「働き方改革関連法案への対応」「社員が働く環境の改善」「健康増進や満足度向上」など。「自社の持続的成長や競争力強化」といった生産性向上によるビジネス成長を直接的に示唆する回答は少なかったという。

 効果については、「出ている」と答えたのは、45%で、46%が「出ていない」と回答。その一方で、「生産性を測定する仕組みの有効度合い」については77%が「十分ではない」と回答し、生産性と人事評価の連動度合いについては80%が「十分ではない」と回答した。実際に働く従業員の評価と連動していないなど、働き方改革の効果と生産性向上を測定する仕組みへの満足度は低いことが明らかになった。

うまくいっているのは「労働環境改善施策」

 働き方改革の具体的な取り組みで「うまくいっている」のは、多い順に「残業時間の削減(57.8%)」「有給休暇の消化促進(38.7%)」「女性活躍の支援(30.2%)」だった。これに「オフィス環境の整備」などが続き、労働環境の改善が取り組みの中心となっていることが分かる。

 「うまくいっていない」取り組みとその要因については、「人事評価指標・方法の変更(22.5%)」「柔軟な勤務制度の導入(22.9%)」「残業時間の削減(19.9%)」という回答が挙がった。

 労働時間の削減については、積極的に取り組む企業が多いにもかかわらず、うまくいっていない施策の上位に挙がっていることについてオラクルは、「実際の業務量を減らすための取り組みを行わずに労働時間だけを削減し、結果的として無理が生じているケースも少なくないことが理由」と見ている。

 こうした課題を解決するには、労働時間の削減だけではなく、時間で管理する人事制度からの脱却や、業務負担を削減する仕組みの導入、業務の標準化や社員個人のスキル向上などが重要と指摘する。

生産性向上を意識したITの積極活用はこれから

 IT活用の現状としては、「活用していない」もしくは「あまり活用していない」という回答が51%となり、「積極的に活用している」と回答したのは、7%にとどまった。

 活用しているITツールとしては「経理・財務システム」「グループウェア」「ビデオ会議システム」が上位に挙がり、タレントマネジメントをはじめとしたHRテクノロジーの活用度は低かった。働き方改革以前からのIT活用と大きな変化は見られず、生産性向上のためにITを積極的に活用しようという動きはまだ鈍いと分析する。

 今後のIT活用については、「ITが企業の将来的な成長に貢献する」という回答が全体の74%を占めた。また「中期的にIoT、ビッグデータ、ロボットおよびRPA、AIなどの最新テクノロジーによって生産性を向上したい分野」としては、「販売、営業業務」と「製造、生産業務」が上位を占めた。


 同調査に協力した慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、「日本企業は労働時間で勝負するフェーズから生産性で勝負するフェーズに移行する必要性に迫られている」と指摘。生産性向上を図るには、生産性を測った上でどのように向上させるかを考えることが重要で、それには人材、従業員の行動、企業の業績などに関するデータなどを連携させて統合的にデータマネジメントすることが有効で、それに連動して時間に代わる人事評価の指標を作る必要もあるという。

 こうした状況を受け、オラクルでは、SaaS群「Oracle Cloud Applications」を強化し、IT活用による業務効率化とイノベーションによる成長促進の両面で企業の働き方改革を支援する構え。AIを活用した「Oracle Adaptive Intelligence」「Oracle Intelligent Bots」「Oracle IoT Apps」といったテクノロジーと、社内外の膨大なデータや業務を統合的に管理するSaaSを組み合わせることが可能になり、業務高度化の実現に貢献するとしている。

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